第二次世界大戦直後のシチリア島。村唯一の娯楽は、映画館『パラディソ座』だった。映画の魅力にとりつかれた少年トトと、彼が父代わりに慕った映画技師アルフレードとの心のふれあいの物語だ。 2作目の本作で89年アカデミー外国語映画賞を受賞したジュゼッペ・トルナトーレ監督は、シチリア島の出身である。イタリア南部が抱える貧…


そしてこちら。
今まで見た映画の中でベスト10を挙げれば絶対に3位より下に来ることのない、言わずと知れた名作です。映画館で公開されていた当初、銀座に見に行ってぼろぼろ泣いてパンフレットを買った思い出深い映画のクセに、実は今まで完全版を見ていませんでいた。
いや〜!!! もう全然別物じゃないですか!!!
そしてさらに、まだ高校生だった(年バレる)初見のころの私には理解できなかったここそこが、この歳になって分かるのが嬉しいっていうか哀しいっていうか(涙)。
完全版のほうが、映画を愛する者の業の深さがより深く抉られていて、なおさら最後のあのシーンが胸に迫ります。正直キツかった。映画に魅せられた者の孤独が――トトのではなく、アルフレードの業が、重量級でのしかかってくる感じです。
すごい映画だ。圧倒されます。

で、えーと、最近myブームなフィギュアスケートの、というかカナダのジェフリー・バトル選手の話に持ってきますと。
なんでこの映画を見直したくなったかというと、夏に原チャリの飲酒運転が発覚して謹慎処分になった織田選手を、春のアイスショーで生で見たときに滑っていたのがこの曲だったからです。
それまではコミカルな演技しか記憶に残ってませんでしたが、こういうエレガントな曲での演技もすごくしっくりきて印象深かったので、12月の全日本選手権にも欠場して事実上今季の復帰はなくなって、リンク上で織田選手を見られない代わりにこの映画を見たくなったのです。
でも。でもでも。
この曲はぜひ、現役男子フィギュア選手の中でも高い音楽性を評価されているバトル選手に演じてもらいたい。
ていうかもうバトルが滑ったらゼッタイにそれだけで泣けるのが分かりきっている。もはや禁じ手と言ってもいいくらいのハマり曲だと思うんだけどなぁ。
だから2年後のオリンピックシーズンにはぜひ、これをFSで使ってください。と、東の方へ向かって念じておきます(笑)。

DVD 角川エンタテインメント 2006/03/03 ¥2,500
そんなわけで、月末にネット開通工事が済むまで家では情報入手経路がテレビしかなくて、仕事もあるのについつい昔録り溜めた映画などに手を出してしまう。
これもそのひとつ。ジョニデつながり……ではなく(笑)、これと同じDVDに入れてある「ニュー・シネマ・パラダイス(オリジナル完全版)」を見ようと思ってデッキに入れて、ついこちらから見てしまった次第。
いやでもいい映画でした。まあ、冷静に考えれば「古い因習に凝り固まって自由のない集団に、自由な心を持った流れ者がやってきて、因習を解き放つ」という、もう何度も手を替え品を替え語られつくした典型なのだけれど、その心を解き放つ媒体がチョコという、味覚(と官能)に訴える実に象徴的なものを持ってきたところが上手い。さらに、設定を一昔前のフランスの田舎町にして、映画全体をメルヒェン仕立てにしているところが心憎いです。
ああ〜でもフランスのブルネットの女性ってなんであんなにコケティッシュで可愛らしいんだろう〜。主人公の着ているドレスがステキ。

DVD アスミック 2007/03/02 ¥2,500
しばらくオフライン環境を強いられており、つまらないので近所のBOOKOFFなどに立ち寄っているもので、読んだ本・マンガは増えるのに感想をメモしていない。
忘れないようにタイトルだけメモメモ。

■大奥 第3巻(よしながふみ、白泉社)
今回は、第1巻のSF的驚きも、第2巻のドラマ的な感動も特になく、中継ぎという感じかな。でもなにせよしながふみだから次巻では「あっ」と驚かせてくれるに違いない。

■DOLLS 1〜4巻(NAKED APE、一迅社)
前から表紙だけ見て絵が気になっていたマンガ家さんのシリーズ。シリアルキラーと、彼らを(ある一定の条件下で)処刑する権限を持った法務省の組織の人たちと、その、思わせぶりな過去の話。
いいからチャチャっと過去を明らかにしてよ!と思いつつついつい次の巻へ手が伸びる……。

■少女漫画家の恋(紺野けい子、ビーボーイコミックス)
BL短編集。両思いになってもすれ違う気持ちの表現がリアル。
たまたま図書館で手に取ったら、わたしの好きな歴史ミステリ。といってもこの主人公が探るのは架空の人物なんだけれど、50年前に死んだ人物について知っている人がそれぞれの立場から情報を言ったり言わなかったり解釈を変えて言ったり。そんな中から主人公は真実を探ろうとするという意味では、充分歴史ミステリ的ツボを押さえてました。
さらに主人公の、離婚の危機に晒されて夫と別居中の女性の性格がまたイイんだ(笑)。
実はこの本は3部作の3作目で、しかも時系列的にはシリーズの一番最初に当たるという、凝ったつくりの話です。なのでこの本から読んでもシリーズの前の話のネタバレにはならないという素晴らしさ。
さっそくシリーズ1,2巻にも手を出そうと思ったのだけれど。これがまた見つからない……。

ISBN:406275326X 文庫 アンドリュー・テイラー 講談社 2006/02/16 ¥1,100
この原作『スリーピー・ホロウの伝説』は、学校の教科書にも載っているという有名な話である。200年前のニューヨークの村で、首なし騎士が村人の首を切りとって持ち去るという連続猟奇殺人事件が続出し、捜査官ジョニー・デップがその捜査に乗り出す。 おどろおどろしい題材を扱いながらも、そこはさすがティム・バートン監督である…

正月早々何を見ようという心構えもなかったけれど、実家に帰って家人が寝た後に居間のコタツで仕事をしながら、ふと「織田信成選手が春に滑ったジャパンオープンのガラのニュー・シネマ・パラダイスを見たいなぁ」と思い立ち、DVDのHDDに残っていたのを見て、続けてHDDに録りっぱなしになっていたこの映画を見る。

ジョニデ好きには評価の高いヘタレっぷりが楽しめるこの映画を、いろいろな方から勧められていたにもかかわらず今まで見ておりませんでした。
先日「スウィーニー・トッド」を見た後では、ポンポン首が飛ぶ残虐描写も抵抗なく、伝説が生活のすぐ隣に息づいていた時代の不思議な感覚を楽しむことができました。
……それにしてもジョニデはヘタレすぎ。そんなにすぐ気絶するな!(笑) まあね、とってもカッコいいヒーロータイプではないからな……。

DVD 日本ヘラルド映画(PCH) 2000/09/20 ¥5,565
(←写真はオリジナル)

試写会に当たったので見てきました。
あまり深く考えずにリンクしているおむすびウーマンさんを誘ったのですが、彼女はスプラッタが苦手だったそうで(汗)。非常に申し訳なく。
とはいえわたしもスプラッタは苦手なんですけど(大汗)。

オープニングを見たときに、これは「チャーリーとチョコレート工場」のネガかしら、と思い、主人公トッドのほとんど感情を見せない演技は「シザーハンズ」みたい、と思い、ロンドンの町の描写は(このときはまだ見てなかったけれど)「スリーピーホロウ」的で、まあ要するにティム・バートンが好きなモチーフを好きなように放り込んで作ったのね、という感想。
原作はブロードウェイ・ミュージカルらしいのですが、それほど歌が耳について離れないほどでもなく、俳優さんたちもいつものティム・バートン映画のメンバーなので特別歌が上手いわけでもなく、「ミュージカル仕立てで映画にする必要性を感じないよね」というのが同行者との共通見解と相成りました。
そして、「この映画、はやらなそうだね」とも(苦笑)。
結局ティム・バートン級になると、自分の好きに映画を作っても興行に乗せることができるのね〜。という結論に達しました。

DVD アルバトロス 2000/03/25 ¥5,040
今年の6月にタイへ行ったとき、往復の飛行機の中で見た映画2本が、ちょうどこの時期に日本で公開されています。

1本目は「その名にちなんで(Namesake)」。画像はその原作本です。
公式サイト http://movies.foxjapan.com/sononani-chinande/

インドからアメリカへ移住した男が、やがて故郷から嫁を娶り、生まれた子どもたちが大きくなって、移民2世として生きていく長い家族の歴史を淡々と描いていく映画でした。
タイ航空便だったので字幕も英語で、うとうとしながら見ていたのであまりちゃんと筋を追えていません。というか、ほとんど映像だけで話を想像していました。
最初はまったくおもしろそうに思えなかったのですが、息子の代の話になる頃にどんどん面白くなってきて、父との葛藤(というほど激しい対立ではないのですが)とのなかで、見ているほうは、父の歩んできた道と、息子のそれとがどうしても重なり合わないせつなさ・もどかしさを味わいます。
すごくおもしろかった。

もう1本は、「テラビシアにかける橋」。
公式サイトhttp://www.terabithia.jp/

これは、途中からしか見ていないのですが、学校でちょっと浮いてしまっている、空想好きな男の子が、やはり空想好きなちょっと変わった転校生の女の子と仲良くなって、家の裏にある森のなかに空想の国「テラビシア」を創り出す話。だと思う(笑)。なにせこれもほぼ映像だけだったので。
まあありがちな話とも言えますが、古典的な、普遍的な話ともいえる。
特に、哀しい出来事を乗り越えた後がまたいいんだ。

どちらもあまり宣伝にお金をかけていないせいか、地味な印象を受けますが、ゼッタイいい話だから、機会があったらぜひ見て欲しいです。

とはいえ、なぜか飛行機の中で見るともなしに見た映画って印象に強く残る傾向がある気がする。
半分想像で話を補うから、余計に映像が目に焼きつくのかもしれない。
例えば、グウィネス・パルトロウ主演の「抱擁」なんかも、すごく印象に残っている。リロ&スティッチも、ピクサーじゃないディズニーアニメなんて、と思っていたけれど、スティッチのキモ可愛さにやられたしなぁ(笑)。あとはフライド・グリーントマトも、ほとんど眠っていたにも拘らず、いくつかのシーンが強烈に目に焼きついていたり。
不思議なものです。
見たいと思っている正月映画リスト。

マリア
http://maryandjoseph.jp/
あらすじを聞いてすでに涙な予感。

カンナさん、大成功です!
http://wwws.warnerbros.co.jp/200poundsbeauty/
予告編が意外とおもしろそうだった。

俺たちフィギュアスケーター
http://oretachi.gyao.jp/
アメリカンお下劣バカコメディかつフィギュアスケート。これは見るしかない。

食の未来
http://syoku-no-mirai.net/
最近のmyテーマ「食」。

そして、見たいような見たくないような微妙な映画。

光の六つのしるし
http://microsites2.foxinternational.com/jp/hikari6/
原作は大好きなんだ! 中学時代のバイブルだったんだ!!
それを、それをこんな風にしやがって……(悔し涙)。

そして、少し先の公開になるけれども今からメチャクチャ楽しみな映画。

ライラの冒険 黄金の羅針盤
http://www.goldencompassmovie.com/
原作もすごく面白かったのに、LotRのニューライン・シネマですよ奥さん。

ナルニア国物語 第2章 カスピアン王子の角笛
http://www.disney.co.jp/narnia/
ライオンと魔女はそこそこだったけれど、なにこのカスピアン王子ったら!

どうせすべては見られないだろうけれど。
「ザ・ミステリ・コレクション」などと銘打っていますが、アメリカの有名なラブロマンス作家による作品。


これを読んでるってことは、私は死んだってことね―ある晩レオノーラの元に届いた一通のメール。発信者は数日前事故死した美貌の詐欺師メレディス。そこに残されていたのは、自殺したある女性と古い殺人事件へ繋がる謎のメッセージだった。手がかりは、霧が立ちこめる小さな入り江の大学町。無数のアンティークミラーが眠る大学内の館で臨時司書の職に就いたレオノーラは、同じ謎を追う男トーマスと共に危険な探偵稼業に乗りだすが…傑作ロマンティックミステリ。


ロマンスよりもむしろ「大学図書館司書」というところに引っかかって読んでみた。
一応主人公は「学術図書館司書」という肩書きだけれど、思いっきり読者の誤解を招きそう、というより前に翻訳者もアメリカの司書制度を分かってないだろうことが丸見えなのでちょい冷める。
自分の専門分野なのでエラそうに解説してみると、おそらく「学術図書館司書」というのはサブジェクト・ライブラリアンのことだろうと思われる。アメリカのライブラリアンというのは、大学で自分の専門分野(サブジェクト)を修めた上で、修士課程として司書の勉強をした人の資格であり、非常に優秀な人たちなのである。日本で言うところの普通の技術職としての司書はテクニカル・ライブラリアンであってこの資格は専門学校でも取れるらしい。
だから、主人公のレオノーラが真面目でお堅い人物とされているのは、修士様だからなのである。

とはいえ、その司書の知識をミステリの解決に活かしているかというとまったく関係なく話は進むのでちょっと肩透かし。
でも、ロマンティックミステリとしては、ちゃんと最後にどんでん返しもあり(ちょっと強引だったとはいえ、あの人が出てくるとは思いませんでした)、がんばってる方ではないかと。

出てくる妙齢の男女みんながみんな誰かしらとカップルになっちゃうのはどうかと思うけど。

それにしても、前にも別の作家の話で家の改築好きヒーローが出てきていたし、これはアメリカの女性が相手に求める要素のひとつなのかしら? そりゃダンナがタダで(しかも喜んで)家をステキにリフォームしてくれたら女性としてはうれしいよな(苦笑)。

ISBN:4576051938 文庫 ジェイン・アン・クレンツ 西 和美 二見書房 2005/12 ¥870
ISBN:4766001559 単行本 暮しの手帖社 2007/11 ¥1,260
刊行当初、書店で見かけていたのに、いざ買おうと思ったら軒並み売り切れていて買えず。
諦めて密林にて購入。

竹書房から出ているものの、麗人掲載は表題の一作のみで、後はシャレード掲載作。
ビブロスが潰れてから、BLバブルも傾いたかあちこち休刊やらなにやらが続き、作家や作品が出版社間を迷走しているような気がしますが、そのせいでか、昔の作品が復活したりして悪いことばかりでもないような。

短編集とはいえ、「ああ爆弾」シリーズ(ギャグ)は5話も載ってる。表題作とその次のは、ほのぼのいい気分の読後感。最後の短編は重めのシリアスだけれど、最後に希望を残しているところがいいし、初期の山田ユギ作品にあった、割り切れないやるせなさみたいなのが感じられる。
……いきなり監禁された次のページで感極まっちゃってるノンケの顔にはどうかと思うが(笑)。

ISBN:4812467705 コミック 山田 ユギ 竹書房 2007/11/07 ¥590
先日「百万ドルをとり返せ!」を発掘した際に一緒に出てきたスパイ小説。
コン・ゲーム小説を探っているうちに「竜の眠り」流れで国際謀略小説もいくつかヒットして、その流れでこのスパイ小説が出てきたので読んでみた。

いや〜!!! 面白いです。最後のどんでん返しがホントに意表を突いていて驚きです。

とはいえ、これも古い話で、冷戦時代が記憶にある人でないと楽しめないかもしれないですね。

ISBN:4102165010 文庫 フリーマントル、稲葉 明雄 新潮社 1979/04 ¥620
秋林さんのところで最近ケーキ作り本を紹介されているので、わたしもひとつ。

お菓子作りを一番熱心にやっていたのは中学から大学くらいのころで、まあつまり売ってるケーキは高くて買えないから家にある材料で自分で作ろうという涙ぐましい時期だったのだった。
しかも、作ったものを自分だけで食べるのは横に大きくなる原因になるので、たいてい学校に持っていってみんなに分けていた。
となると、持って行きやすいのは下手にデコレーションなどない、焼きっぱなしのパウンドケーキの類い。

そんなわけでこの本が大活躍でした。

オレンジケーキとか、デコレーションしないでそのまま食べるスポンジケーキとか、よく作ってたなぁ。

自分で稼ぐようになって、市販のケーキもためらわず買えるようになったら、やっぱりプロが作ったケーキの方がおいしいので自然と作らなくなってしまったけれど、アトピーが悪化したときには白い砂糖や油脂がよくないということで、その辺を自分で調節したケーキなど焼いて仕事のお供に食べてました。

ホントは先月きゅうに「かぼちゃのパウンドケーキが食べたい!」と思い立ち、ネットでレシピを検索したのだけれど、勢いで独り暮らしを始めることにしてしまったら忙しくてとてもそれどころではなく(涙)。
新居で落ち着いてケーキを焼きたいなぁ。


ISBN:4766205995 単行本(ソフトカバー) 小川 聖子 グラフ社 2000/12 ¥1,050
コンゲームを読む週間第4弾くらい。
コンゲームと言えば、必ず名前の挙がる超有名小説を読んだ。
姉が結婚前にアーチャーにはまっていたことを思い出し、ウチのロフトの本棚を漁っていたら出てきたので。

大物詐欺師で富豪のハーヴェイ・メトカーフの策略により、北海油田の幽霊会社の株を買わされ、合計百万ドルを巻き上げられて無一文になった四人の男たち。天才的数学教授を中心に医者、画商、貴族が専門を生かしたプランを持ち寄り、頭脳の限りを尽くして展開する絶妙華麗、痛快無比の奪回作戦。新機軸のエンターテインメントとして話題を呼ぶ”コン・ゲーム小説”の傑作。


「摩天楼の身代金」と同様の比較をすれば、全体で341ページのうち、主人公たちが騙された、と分かり、そのうちの1人が反撃に出るのが80ページ辺り。少々長いかなぁ。
でも、そこを過ぎれば4人が順番に悪者を騙して懲らしめるのだけれど、悪者は金持ちなので騙されたと言っても騙されたことに気づくわけではなく、読者は「ばれるかも」とハラハラしながら楽しく読み勧められる。
さらに先が気になる仕掛けは、4人のうち1人が、自分の損を取り返すためのプランをなかなか思いつけないところ。そのせいで、彼は仲間からも軽く見られてしまう。読者としては、どういうすごいプランを考えて最後に悪者をこてんぱんにやっつけてしまうんだろう?と楽しみに読み進むことができる。

もっとも「そりゃゼッタイ普通ならばれてるって」というところも何箇所かあるけれど、嫌な気持ちにならずに読み終えられる、楽しい1冊でした。

ISBN:4102161015 文庫 ジェフリー・アーチャー(永井 淳) 新潮社 1977/08 ¥660
コンゲーム小説を読もう週間第3弾くらい。

「世界でもっとも安全」な超高級マンションがニューヨークにオープンした。青年トニオは、周到な準備と大胆な発想でこのビルを”人質”にし、警備側の誰一人として予想もしていなかった要求をつきつける。さらに、脅迫した400万ドルの受け取り方法についても、まったく新しいアイデアを編み出した。異色でハードな最高の襲撃小説!(文庫裏書より)


グレート! マーベラス!!

細かいところまでよく練られている”襲撃”小説でした。
犯人の、大金を必要とする動機もコンパクトに説得力ある描写で納得させられる(400ページ中最初の36ページ目で!)けれども、彼がいかに自分が捕まらないように大金をせしめようとしているのかはまったく説明がないまま、彼の行動を一つ一つ読まされていくので、非常にシンプルかつ力強い骨格となっています。
そこへ、犯人の青年と偶然拾ってしまった少女との交流――青年の完璧な計画が、この少女のせいで破綻してしまうのではないか、という緊張感――という肉付けと、脅迫されているマンション+ホテルの支配人の、人間的な悩みとか個性的なその周囲の人びとの様子が肉付けとなって厚みを増しています。

とはいえ読者は青年が(例え計画の途中で人を殺したとしても)大金をせしめるのに成功して欲しいと思っているので、最後のどんでん返しは本当に意外。そして本当の最後の最後はしっかり満足して本を置くことができます。

いや〜気持ちのいいエンタテインメントでした。

やっぱりね。動機付けが大事だと思うのですよ。
今回は犯人視点だったけれど、たとえこれが警察側の視点だったとしても、犯人の動機が読者の納得できるものでないと、コンゲームの駆け引きの緊張感がなくなってしまう。

そして、えーっと、この本の犯人、双子の弟のこと好きすぎ(笑)。

ISBN:4167275074 文庫 リチャード・ジェサップ(訳・平尾 圭吾) 文芸春秋 1983/01 ¥571
今さらながらに、1995年発表の国際謀略小説を読んだ。
高村薫や五條瑛を読む人は必ずといっていいほど通っているはずの服部真澄を、実はエッセイ「骨董市で家を買う」以外読んでいなかった。

いや、もっと重苦しい話かと思ったら、存外読みやすいので驚いた。どいつもこいつも密約の内容を思わせぶりにはっきり言わないところとか、あと読点の多いところとかはこなれていない感があるけれど、ストーリーテリングはすごい。

でもやはり12年前の作品。当時は中国の隆盛は望ましいものであったけれど、現在は、公害問題や環境破壊とか、世界的なエネルギーの流通の変動と価格の高騰とか、中国(の市場)に対する印象はがらりと変わってしまった。コンピュータ周りの技術の描写についても、現代を描いた小説の古びるスピードは速すぎる……。

ISBN:4101341311 文庫 服部 真澄 新潮社 2001/01 ¥900
公式サイト http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/

いのちの食べかた - goo 映画
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD11461/story.html

ドイツ・オーストリアのドキュメンタリ映画。ヨーロッパ各地の肉や野菜の生産現場を、セリフ・インタビュー・ナレーション一切なしで、しかもいろんな食材のいろんな加工過程を淡々と繋いでいく。
いまやこれらの現場はなるべく人手をかけずに機械化・オートメーション化が進んでいて、それはまるで機械の工場の産業ロボットを見ているようで、機能的で無駄を排除されたうつくしさがある。
同時に、次から次へと流れていく「食材」たちのあまりの数の多さ、「個」を排除され生の尊厳を排除された扱われ方に、滑稽ささえ感じる。非現実的とでもいうか。

言葉による説明がまったくないので、見ているほうは自分でいろいろ考えなければならない。
わたしが一番感じたことは、「牛」はいつ「牛肉」になるのか、ということ。
屠殺される直前、イヤイヤをするように首を振る牛は牛で、眉間に電流を流されて死んで転がり、でも心臓はまだ動いているので脚がぴくぴく動いていたりするのも牛で、でもその後逆さに吊られて解体が進むうちにいつしかソレは肉に変わっていく。自分の感じ方の中で、どこが生と死の境い目なのだろうか、と考えさせられる。

残酷だ、なんて言わない。今さらだから。自分が肉を食べているときよりも、スーパーやコンビニにいつ行ってもたくさん並べられている食材の、どれだけが捨てられていくのだろうと思うときにいつもその残酷さを感じる。

(参考)
「私の牛がハンバーガーになるまで」感想
http://diarynote.jp/d/20675/20040629_0_0.html

「生物と無生物の間」感想
http://diarynote.jp/d/20675/20070831.html

また、この映画は言葉による説明はタイトル(原題「Our Daily Bread」)以外皆無だし、BGMもないし、無作為にシーンを並べているようでランダムにあちこちの生産現場を見せられる(それぞれの食材の加工シーンもばらけていて、加工の順番にはなっていない)のだけれど、一見、私見を排した編集に見えて、その無作為さのどこかに監督の意図があるはず、と思う。
見えそうで見えないその意図が、もどかしくて心に残る。
コンゲームもの第2段。
織田雄二主演で映画になっていたのが記憶にあったので、主人公はすっかり織田顔に。
いろんな立場の人が入り乱れ、状況が二転三転してすごく上手くできているのに、なんだか全体は淡々とした印象なのはなぜだろう?
なんとなく、そこにコンゲームもの最大のツボがあるような気がする。

ISBN:4043582013 文庫 井上 尚登 角川書店 2001/05 ¥720
読み始めてから、どうやらこの話には先行する話があるらしいことに気づく。
買うときに裏書も読んだはずなのに……と思いながら、適当に頭の中で補いながら読む。
と、実は巻末にこの前の話が載っていたという(涙)。
でも、本のどこにも「巻末の1本が最初の話」であることを明記していない。
あまりの不親切さ加減にちょっとムッとする。

そういう順序の読み方をしたので、話の内容にも今ひとつ乗り切れず。
編集者にはしっかりしてほしい。

ISBN:4813050948 コミック 石田 育絵 大洋図書 2007/10/30 ¥630
小学校に通う、ショウヘンとジェンシン。優等生のジェンシンとは対照的に、お調子者のショウヘンはクラスで一番の人気者でもあり、厄介者でもあった。担任はそんなショウヘンの品行を正すために、常にジェンシンが傍らにいるように指示。無理やり友達になったジェンシンと、親友だと思い込むショウヘン。そんな二人の想いは、少しずつ変化していく。やがて高校生になった彼らの前に、転校生が現れてから、二人の間に波風が立ち始める。(goo映画より)

公式サイト> http://www.karen-natsu.com/

リンクを張っているおむすびウーマンさんから誘われて、早速行ってまいりました。
なんでも今年のレズビアン&ゲイ映画祭のクロージング作品だったらしい。あれ〜毎年行かないくせに上映作品の内容だけはチェックしていたはずなのに、目こぼれしてました。

なんといっても絵が、構図がきれい。そしてセリフはそぎ落とされ、ほとんど誰も声を荒げることなく淡々と、3人の表情で見せていく映画。しかも、計算しつくされたようにこの3人以外の人物の描写も慎重に排除されている。一方通行の三角関係の閉じた世界、10代特有の周りが見えない閉塞感も上手く描かれていた。

以下、ネタバレあり。要注意!!






優等生で繊細なジェンセン、多動性症候群で落ちこぼれだけれどバスケの得意なショウヘン、周りから浮いている孤独な少女ホイジャ。ジェンセン視点で描かれ、自分の気持ちを分かっているホイジャの内面も描写されるので、
「筋肉バカのショウヘンが周り見えてないのが悪いんじゃん!」
と観客は思い込まされるのだけれど、映画の最後の最後で、ショウヘンの一言が、彼のずるさの裏にある切実な想いを告白していて、同時にこの三角関係が解消されることもなく、ジェンセンが泥沼から脚を抜くことができないことがはっきりする。

せ、切ない〜っっっ

そして、おむすびウーマンさんとも話したが、とっても”日本のBLにありそう”なお話でした。
そして、とってもありがちなセリフに思わずもらい泣き。ハヂカチ〜。

でもとてもいい映画でした。ゲイムービーだということを抜きにしてもいい映画でした。

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