金井美恵子  文庫 河出書房新社 発売:1999/06 672円
突然、猫をおしつけられて、ぼくは困ってしまう。間もなく五匹の仔猫も誕生した。そこへ、気ままで、気の弱いおかしな人間たちが、次々と押しかけてくる。ぼくの密かな夢は、どうなってしまうのだろう?―猫を飼う青年の頼りないやさしさ、自分探しの哀しみ。現代の若者を描き切った、楽しい連作小説集。女流文学賞受賞作。


久しぶりに純文学を読んだかもしれない。
だらだらと地の文が続き会話も地の文で語られる文体に、初めは違和感を覚えたけれど、読み進めるうちに、普通の人は日常生活でいちいち文章を述語で切って終わらせたりしないものだよな、と思い直す。
そうであれば、この残●感ただよう文体が、ではなく、主人公のぱりっとしない生き方や、あえて答えの出ない日常描写や、偶然が多すぎて小さい世界に留まっている物語が、共感を阻害しているのかと思う。


人間のみなさんへ――ここに収められた13の短編には、象、駱駝、犬、猫、豚、鼠等、種族こそ違え、いずれも日ごろ口数の少ないわたくしども動物の喜怒哀楽が赤裸々に描かれております。あなたがた同様、わたくしどもも怨恨、正義、痴情、物欲等、いろいろな動機から人間を殺します。殺人の手段も多種多様で、たとえば……。


図書館でつらつら歩いていて目に付いた本。パトリシア・ハイスミス。

動物視点のものと人間視点のものがあって、動物視点だとつまり動物が擬人化されていて、ファンタジーっぽくなってしまうけれど、人間視点で、動物が動物らしい行動をとって事件が起こってしまう話のほうが凝っているように思う。難しいのはわかるけど。
ただ、人間視点の話だとたいてい、動物がちょっと歪んでる人間から受けた虐待の報復で殺しちゃう話なのでけっこう痛い。(鶏の話や、ハムスター、鼬の話。)
とはいえ動物視点のも面白いのがあって、Gの話はなかなか。一番好きなのは、(ソレとは関係ないけど!)猫の話。

ちなみに。
私はときどき、ハイスミスとテリー・ホワイトを混同する……。
本よみうり堂のこのエッセーを読んで、読みたくなって購入。
http://www.yomiuri.co.jp/book/comic/manga/20130108-OYT8T00394.htm

人類を魅了し続けてきた飲み物、コーヒーにまつわる様々なストーリー17話。Ja pan Expo第3回ACBDアジア賞輝き、アングレーム国際バンドデシネフェ スティバル2009年公式セレクション出品作品の『アンダーカレント』作者の豊田 徹也が贈る、人間ドラマありコメディーありSFありハードボイルドありの短編集です。

チェロ弾きの女性が出会った、怪しいイタリア人(?)。映画監督を名のり、コー ヒーをたかる彼の振る舞いはいかにもうさんくさいが……? 登校拒否の少女が一人 暮らしの叔母を訪れ、いっしょに生豆を焙煎し淹れたてのコーヒーを味わう……。な どコーヒーにまつわる様々な物語を17編収録。


1冊の中に17編。つまり1篇ずつが大変短く、それでも、だからこそ、そぎ落とされた描写と想像力を掻きたてる会話が魅力的。たとえば、上に引用した紹介文では「登校拒否の少女」とあるけれど、その短編のなかのどこにも登校拒否だとは書かれていない。ただ、何気ない会話から、少女が生き辛い生を生きていて、叔母も、母も彼女をそっと温かく見守っていることだけが分かる。
いい話だ。
昨年、この年になってようやく「あしながおじさん」を読んだのだが、
http://yogiribook.diarynote.jp/201203181408164616/
続編があることは知っていたけれど、積極的に読もうと思っていなくて、先日図書館に行ったら見かけたのでようやく読む気になったもの。

前作は孤児である主人公のわくわくキャンパスライフwithロマンス、だったので気楽に読めたが、
今度は前作の主人公のお友だちの暢気なお嬢様による孤児院経営お仕事小説withロマンス(ほんのちょっぴり)なので、
違う意味でおもしろいというか。
ただ、20世紀初頭のアメリカにおける精神を病んだ人への偏見が読んでいてきついし、
サリーによる孤児院改革は、理事長様による無尽蔵な寄付金によって成功しているものなので
いろいろとすっきりしないところはある。

肝心のロマンス部分は、書簡形式による一人称小説だということもあるけれど、わりとあっさりというか、気が付いたら愛してました、という感じでいきなり最後にラブラブになるのでちょっと物足りない。

む-.
先日、NHK BS3で放送していたのを視聴。実は初ウディ・アレン映画。

バカンスでバルセロナを訪れたヴィッキーとクリスティーナは、親友同士だが恋愛観は正反対。二人はヴィッキーの親戚夫婦の家に滞在して、バルセロナの街を観光する。ガウディの建築物や、ミロの芸術に酔いしれていた。ある晩、訪れた画廊のパーティーで出会ったのは、画家のフアン・アントニオ。彼は元妻と離婚したばかりだった。そんな彼に、クリスティーナは興味を持つ。(goo映画より:http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD14291/index.html


テレビ放送だったので吹き替えだったのですが、あのナレーションでどんどん話を進めるのはこの映画が特別なのでしょうか、それともウディ・アレン映画の特徴なのでしょうか。
最初はすごくびっくりしたのですが、テンポよくリズミカルに話が進むので、これはこれでいいのかとだんだん納得。しばしば流れるテーマ曲もテンポがよくて耳に付く(笑)。

その分ものすごい情報量で押し流される感じがして、おもしろいんだけどどうおもしろいのかまだ上手く説明がつかないです。
不思議な映画。
でもすごく評価高いから、見続けてると癖になるのかしら。

「崖っぷちの男」を返却したついでに、ふらっと店内を歩いて周っていたら、そういえば見たいと思いつつ見逃していたこの映画、そろそろDVDになってないかしら?と見てみたらあったのでレンタル。

愛、セクシュアリティ、死、家族の絆をストレートにカラフルに繊細に描く、名匠フェルザン・オズペテク監督作。ローマに住む作家志望の青年トンマーゾは南イタリアで老舗パスタ会社を営むカントーネ家の次男。兄アントニオの新社長就任で共同経営者と一族の晩餐会が開かれる。トンマーゾはディナーの席で、家族に黙っていた3つの秘密を告白しようと決心するが―。


責任感あふれるけれど自分の本心を押し殺して家のために尽くしてきた長男、そんな家を出てローマで大学に通いながら自分の道を模索する次男、の話ばかり解説に出てくるけれど、実はその間に長女もいる。長女は会社経営に熱心だけれど女性だから跡継ぎの話にはまるで出てこない。兄の秘密も弟の秘密も気付いている。典型的な3人兄弟の中間子。

暢気な弟から秘密を聞いて兄がキレるのもよく分かる。基本不器用な長男気質。

弟はやっぱり基本甘ちゃん。でもだからこそ家のしがらみを断ち切ることができるのかも。

というような、兄弟姉妹の人間関係から見て非常におもしろかった。

もちろん、この家の祖母、長らく自分の気持ちを押し殺して生きてきて最後の最後でやりたいことを誰はばかることなくやって自由になった彼女の物語もうつくしい。

とはいえ、最後は祖母の物語と現在の物語をダンスパーティでまぜこぜにして主人公の問題をうやむやにしたのはいただけないなぁ。
(ローマでの恋人と、提携先のパスタメーカーのお嬢様と、どちらを取るんだい?!)


この映画を観ようと思ったのは、もちろん兄と弟共通の秘密がゲイだということです。(開き直り)
半年ほど前。
偶然通りかかったインテリア雑貨店が閉店セールをやっていて、掘り出し物を目当てに
ふらりと立ち寄った。
そこに、シンプルでシックな一人がけソファがあった。
欲しいと思っていたわけでもないけれど、少々疲れていたこともあってちょっと座ってみた。

……自然に体が支えられ包み込まれるこの感じは!!!

ということで感激して値札を見たら、ちょっと衝動買いするにはいいお値段。
でもいちおう値札(商品名込み)をスマホで撮って、帰宅してからぐぐってみたら
フランスの有名ブランドの定番ソファで、セール価格は原価の半分くらいになっていた。

そのソファはこちら。
CALIN(カラン);リーン・ロゼ
http://www.ligne-roset.jp/products/living/sofas/calin.html

いまはソファのない生活で不自由は感じていなかったけれど、その前に遊びに来た友人から
「広いねぇ。ソファ置けるじゃない!」
といわれてからなんとなく頭にソファのある生活、というものが引っかかっていて、急に買おうかという気分が盛り上がってきた。
とはいえ本当にいまお金がないので、資金繰りについて頭を悩ませていてふと、気が付いてサイズを確認した。

タテにしようとヨコにしようと、廊下とリビングの間のドアを通らないことが判明。

早まらずに済んでよかった……という話を、秋林さんの日記を読んで思い出しました。
先日テレビでたまたま「リトル・ダンサー」を見て、父ちゃんのスト破りのシーンでいつもどおり号泣した、とツイートしたら、お友達から「ジェイミー・ベルくんいい感じに大きくなりましたよ」と聞き、気になって検索したら「崖っぷちの男」の弟だった!
とはいえ、この映画は気になっていながら結局見損ねていたので、TSUTAYAに行って借りてきた。私にしては珍しく準新作なのに。

「アバター」のサム・ワーシントン主演で、ある計画のため飛び降り自殺をしようと見せかける男と、その男と対峙する女性刑事の駆け引きを描いたサスペンス。30億円のダイヤモンドを強奪した罪で収監された元刑事のニックが脱獄。ニューヨーク・ルーズベルトホテル高層階から身を乗り出し飛び降りようとする。制止しようと説得する警察に対しニックは、最近の任務に失敗して後がない女性刑事リディアを唯一の交渉役として指名するが……。共演にエリザベス・バンクス、エド・ハリス、ジェイミー・ベルら。監督はドキュメンタリー出身で本作が長編デビュー作のアスガー・レス。
(映画.comより)http://eiga.com/movie/57259/


おもしろかった!
いきなりホテルの窓の外に立つシーンから、少し時間を戻して主人公が実刑判決を受けて刑務所に入っている元警官であること、そこから父親の葬式への参列から逃げ出すところまでをコンパクトに見せる。
後は主人公が飛び降りを示唆して衆目を集めている間に、兄の指示を受けた弟が恋人と一緒にある計画を実行するシーンがそれぞれ交互に描写されて緊迫感が続く。
兄は同じ警察内部の誰かにハメられたと主張していて、だれが裏切ったのか、本当に無実なのか、そして弟にやらせている計画の目的は?といった謎もてんこ盛り。
とはいえ緊迫状態が続くと観客も疲れてしまうので、そこは主人公と交渉人との気持ちの通じ合いや、気弱な弟としっかりものすぎる恋人のやり取りで和ませる。
最後の最後にどんでん返しもあって、完全に勧善懲悪で見終わった後もすっきりして気分がいい。

まあ、弟のやる計画にはいろいろとご都合主義というか上手くいったのは偶然でしかない点もいくつかあるけれど、見ている間にわれに返るほどの欠陥ではないので許せる。

よい映画でした。

4月から、国立新美術館で「貴婦人と一角獣展」が開催されるという。
http://www.lady-unicorn.jp/

なので、以前読んだこの作品をテーマにしたシュバリエの「貴婦人と一角獣」を再読しようと家中を探したが見つからない。
代わりに見つけた、同じ作品をテーマにしたロマンス小説「七番目のユニコーン」を再読。
(以前の感想)
http://yogiribook.diarynote.jp/200605232121360000/

前に読んだときよりも、ロマンス小説に対する期待値が下がっていたというかロマンス小説の読み方が分かってきたからか、以前よりは楽しく読めたように思う。

ちなみに、シュバリエのほうは実は図書館で借りて読んだのでうちにあるはずなかったと、過去の日記で判明。
これを機会に購入しました。


地上波放送はまったく期待していないので、明け方・午前中のライブ・ストリーミング中心です。
長い物語でした。
途中、すでに語られた事件を犯人側から描写する、という部分が長くてちょっと中だるみしたりしましたが、やはり最後が近づくとノンストップになって、実は4巻後半から5巻は深夜3時まで一気読みでした。
翌日も仕事あるのに!

「模倣犯」というタイトルは、この物語で語られる事件とはどこかそぐわない、と思いながら読み進めましたが、最後の最後、ここぞという台詞でようやくその意味が分かってグサッと来ました。
そして、犯人が捕まった後、被害者の遺族である気丈な祖父が崩れるシーンがもう、涙なくしては読めない。
宮部みゆきは、本当に人間の強さと弱さを受け入れて理解しているんだろう。

やはり安定の宮部みゆきは鉄板。
読んでいた本を読み終わってしまい、帰りの電車の中で読む短い本はないかしら、と書店をふらふら歩き回って、「そういえば恩田陸をしばらく読んでいなかった」と、そのなかでも薄いものを手に取った。
けっして、タイトルに猫が入っているからではない。

本を開いてから、これが脚本だと知った。
脚本は読み慣れないのでどうかと思ったが、普通に面白く読めた。

高校時代の友人が亡くなり、映画研究会の同窓生男女5人が葬式帰りに集まった。小宴がはじまり、四方山話に花が咲くが、どこかぎこちない面々。誰かが席を外すと、残りの仲間は、憶測をめぐらし不在の人物について語り合う。やがて話題は、高校時代の不可解な事件へと及んだ…。15年前の事件の真相とは?そしてこの宴の本当の目的は?著者が初めて挑んだ密室心理サスペンス劇。


でも、恩田陸なので「15年前の事件の真相」も「この宴の本当の目的」もなんとなく分かったような分からないような雰囲気で終わる。
ええー?!
でも、まあ恩田陸だから許せる(笑)。


猫絵十兵衛 御伽草紙(http://www.amazon.co.jp/dp/4785930764)のマンガ家による猫エッセー。
猫の溜まり場になっている川沿いに住んでいて、捨て猫の鳴き声を聞くと締め切り前でも放っておけない悲喜こもごも。
けっこう声を出して笑っちゃいました。

前に住んでいた街のオタクフレンドリーな本屋で、猫ものマンガコーナーがあることにいまさら気づいて、つらつら眺めていたら「市川(前に住んでいた街)在住のマンガ家うんぬん」とPOPが立っていたのでついつい購入してしまいました。
実際には知っている場所が出てくるわけではなかったのが残念かな。


※BL注意

元はといえば、以前住んでいた街のオタクフレンドリーな本屋へこのマンガを買おうと立ち寄って、なぜかレジでは3冊出してたのでした。
と、いうわけで「俺物語!!」と一緒に買った本。

第1巻ということでまだ話は始まったばかりなのだけれど、デッサン力のあるマンガ家さんなのでダンスシーンがうつくしい~♪
私の好きな、ワンコ系とクールビューティ系の組み合わせだし。ただし、まだどちらがバッテンの右か左かわからないので、その辺も含めてまだまだ未知数かしら。

BLにはありがちなのだけれど、そして私のような素人が言ったら失礼なんだけれど、少しネームが整理し切れてないところがある気がする。
3度くらい読み返してやっと意味が把握できるようなところが。
(今市子さんのマンガにもあるから、井上佐藤さんだけをどうこう言うつもりはない。)
うーん……、編集さんガンバ!

去年ずいぶん話題になっていたこのマンガ、気にはなっていたのだけれど、今日ようやく買ってみました。

剛田猛男は高校1年生。身長2m・体重120kg(いずれも推定)。好きになった子は、いつも幼馴染みのイケメン・砂川の方に行っちゃうけど、真っ直ぐで不器用で鈍感で、男子からは超モテモテ! ある朝、通学電車の中で、ひとりの女の子を痴漢から救ったことで猛男にも春到来の予感…!? 笑って泣けて、胸キュンも満載の、爆笑純情コメディー!


おもしろかった!
剛田の、外見によって誤解される不遇さはあまりたくさん描かれていなくて、外見がアレでなければごく普通の別マのラブコメだけど、あの外見のインパクトがすべて。
でも、ラブコメとしても剛田に一目ぼれする大和も天然で、初々しい2人が可愛い。

なんだかんだいって剛田の周りって実は彼の理解者に囲まれてる。

シアワセになれるマンガ。

>秋林さんへ
いまどきの別マの恋愛モノはこういう傾向らしいですよ(笑)。
先日図書館で「通勤電車の中で読む本ないかしら」と日本の小説(文庫)の棚をつらつら眺めていた。
本当は、歌野晶午「葉桜の頃に君を想うということ」を読んでみよう(と思って文庫化を待っている間に忘れていたら、もうとっくの昔に文庫になってた)と思っていたのですが、見当たらず。
そんなこんなで、日本の最近のミステリで、疲れないけど面白い……と思ったら安心の宮部みゆき。なかでもこれが目に付いたので。
だって、300p超の文庫が全5巻だから、いやでも目に付く(笑)。
1週間で1冊読み終わったので、全体の感想は4週間後(以降)になりますが、読み終わるごとに記録はしていこう(そして読了冊数を稼ごう)と思います。

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