※BL注意

「スタア・バーへ、ようこそ」の残りを行きの電車で読み終わり、家には昨日図書館で借りてきた本が3冊も積んである。
出先でたまたまBookOffが目に入った。ならば、105円で適当な文庫、それも帰りの電車内であっという間に読み終わるだろうBL小説でも、というつもりで検分していたら、昔読んで好きだった作家さんの本が置いてあった。
冒険する気もなかったので、安心のブランド(笑)をチョイス。

大学生の郁也はストーカー対策のため、バーで顔見知りの石井と恋人のフリをすることに。相手が諦めるまでの、おままごとのような「コイビトごっこ」。だが石井が与えてくれる温もりに郁也の心はほどけていく。離婚歴があってヘビースモーカーで面倒くさがりで口が悪い、その上仕掛けてくるキスはあり得ないほどしつこくて…だけど本当はとても優しい。自分の想いに気づいてしまった郁也は必死に告白するが、石井は郁也をお子さま扱いするばかりでまともに受け取ってくれず…。


やっぱりおもしろかった!
年の差で若い子ががんばる話はええなぁ。
年上のオヤジが本当にオヤジに描写されていたので、最初に挿絵を隠しながら読んでいて、帰宅してからあらためて挿絵を見たらオヤジなのに線の細いキレイ系に描かれていて驚いた。
もっとくたびれたオヤジでイメージしてたのに……。

でも、BookOffで買ったのが申し訳ないくらいにおもしろかったので、他の椎崎夕作品をちゃんと買おうと思います☆
カクテルの世界チャンプが銀座に出店してはや三年。いま最も注目されるバーの懐深い世界を絶妙の語り口で教えてくれる大人の読物。


……という説明を読んで、もっとエッセー風な、バーのエピソード集とか、マナー集みたいなものを想像していたのですが、まあエッセーではありますが割りとバーの入門書という感じで、カクテルの種類やそのレシピ、グラスの種類、シェーカーの種類等々、丁寧に、こだわりを持って説明されてる。
ちょっと期待とは違ったけれどおもしろかった。近所に気になってるバーがあるので、今度勇気を出して入ってみようかな。

【追記(8/22)】
読み終わったつもりで上の感想を書いたのに、後から見てみたらまだ2章残ってまして、そこにはバーのエピソードが出てました(汗)。なにを読んでいたんだ自分……。
とはいえ、客側の、というよりもバーテンダーさんから見た営業上のエピソードなので「こういうのはマナー違反」というのはなくて、基本的にどんな要望にもできるだけ応えます、というスタンスでしたが。
ああ、でも「他のお客さんに話しかけるのはマナー違反」というのは書かれてました。ちょっと意外でした。
※ BL注意

……BL注意表示をするようになってから、やたらと注意書きを書き込んでる気がする。
変だなぁ。

現役高校生のモデル・榊拓人のもとにドラマのオファーがきた。題材が同性愛だと知り、出演を嫌がる拓人。だが拓人を恋人役に指名したのは、憧れの俳優・恵裕次だった。彼の役者としての姿勢に触発されて、拓人はドラマに真剣に向き合い、そして気づく。胸の中にある痛みに。演じることでしか伝えられない、裕次への恋心に―…。架空の恋を辿って紡ぐ、二人の物語。


サンドラ・ブラウンを読んでいたら、何かいいBL小説が読みたくなって、密林で最近出たBL小説のあらすじやレビューを眺めていて、朝丘戻に引っかかった。読んだことはなかったのだけれど、コバルト文庫で2003年ごろから活躍していた作家さんらしい。
この本は、以前コバルトで出していた本のダリア文庫出しなおし。

(以下、ネタバレ含む感想)

まさかの悲恋ものでびっくりだ。
でも、自サイトで連載していたという続編がこの後出るらしいので、そちらでは最終的には幸せになることを期待。

文章は読みやすく端正で過剰な装飾もなく好感が持てる。
受けキャラが女々しくないところも、攻めキャラが甘やかしすぎないところもよい。
芸能界もので期待されるエピソードはきちんとツボを押さえているし。

ちょっと今回は諸事情により冷静に読めない部分もあったけど、他の話も読んでみたくなった。

※BLです。 (今度から最初に注意書きを入れることにしました。)

ネットで見かけた本のレビューで気になったものはBookOffのお気に入りに入れておいて、他の本を買って送料無料(1500円以上)にするためにそれらを買い物カゴに放り込んだりするのですが、買った時にはすでに、どこでそれが薦められていてなぜそれを買う気になったのか、すっかり忘れているわけです。
で、しばらーく前に買ったものの、以下の内容紹介文を読んで「なんでワタシこれを読もうと思ったんだろう?」と放置。読む本がなくなったときにようやく手に取ったりして。

高校の同級生で親友の蒼司に突然告白された千夏は、恋よりもずっと一緒にいられる友人であることを選び、やんわりと蒼司を拒絶する。その翌日、蒼司は学校を欠席した。心配した千夏は自宅や携帯電話に連絡を入れるが、なぜか知らない男が蒼司の電話に出る。男の言葉は異国のもので聞きとれない。不安に駆られた千夏は蒼司の家を訪ねるが、そこに彼の姿はなく―。彼らの運命を変えたラブサスペンス・ストーリー。


……この内容紹介から想像した話と、まーったく違っていて驚いた。
そして、何年か前に起こった、とある事件に想を得て書かれている。その事件は、人は死ななかったけれど大変大きな、そして犯人も犯行目的も明らかになっていない事件で、私もすぐに思い出した。
それを、こんな風に料理するとは、驚きました。そこが面白かった。

BL話のほうは、初めは親友のままでいようとした千夏が、とあるきっかけで自分も蒼司を好きだと自覚する、そこにそれなりに説得力があってよかった。
蒼司(受)がどうしても女々しくなってしまうところだけがちょっぴり残念だったかな。これ、二人の立場を逆にしたら成り立たないかしら?

小説としても、地の文で読ませる力があって、すらすら読めました。

感想はきちんと書きたいので後で。(といって結局書かなかった感想がいくつもあるが/汗)
価値観が多元化した社会で感じる閉塞感。気遺いに満ちた「優しい人間関係」のなかで圏外化におびえる恐怖感。ケータイやネット、家庭から学校といった日常は、過剰な関係依存と排除で成り立っている。子どもたちにとって、現実を生き抜くための羅針盤、自己の拠り所である「キャラ」。この言葉をキーワードに現代社会の光と影を読み解き、「不気味な自分」と向きあうための処方箋を示す。


岩波ブックレットなので薄い本ではあるのですが、ちょっと時間をかけて読みました。
最近も中学生がいじめを苦に自殺するという痛ましい事件がありましたが、今の子どもたちの「いじめ」はどういうメカニズムで起きているのだろうと思って手に取りました。

子どもたちが「キャラ」として自分の居場所を確保する、という心性は、いまいち分かりにくいのですが、子どもたちの世界で起こっていることはオトナの社会でも起こっていることであって、自分の自尊感情を傷つけるものを排除しようという方向に進む危うさも、同じ根源から解き明かされていてナルホドナァと考えさせられました。

高校生の姪に、実際に学校で起こっていることについて話を聞こうとしても、こんなふうに整理して話してくれないので、「キャラって何?」と聞いても答えてもらえない…。
映画化決定の全英ベストセラー!
ぼくらがつきあう? そんなことがあれば豚だって空を飛ぶよ!
プロポーズされるかと期待してでかけたレストランで、フレイアは5年間同棲していた恋人に別れを切り出されてしまう。愛も家もなくして行き場のなくなったフレイアは、10年来の友達、ジャックのもとに向かった。かくしてふたりの同棲生活友人だったときには想像もしなかった波乱づくしの毎日がはじまることになるが……。
心はいつでも近くに感じるのに、ふたりの距離感はいっこうに縮まらない。「友達以上恋人未満」な関係に奇跡はおこるのか。
ニューヨークを舞台に繰り広げられるラブ・ロマンス!


年下の男の子ががんばっちゃうラブロマンスmyブーム第●弾。(数えてません/笑)
秋林さんからのお薦め。(ありがとうございます~♪)
ジャックはフレイアの3歳下で、年齢差がそれほど障害になるとも思えないけれど、ジャックがNYに出てきたばかりの頃、フレイアが面倒を見てあげたという関係とか、そもそもフレイアが気が強くて仕切りたがりの長女体質なところと、さらにジャックが若い子好きなところから、必要以上にフレイアが年齢を気にするところが、逆年の差萌えとしてはいい感じ。
実際にフレイアより8歳下の若造とも恋愛未遂になるのだけれど、3歳下でも弟扱い気味なので8歳下となるともう赤ん坊扱いで、結局男の方が逃げていく。

次々とイベントが起こって飽きさせない話なのだけれど、フレイアは気が強くて自意識過剰、ジャックは親の仕送りに甘えて書かない言い訳を探している作家、と、どちらも感情移入しづらいキャラクターなのが、どうにもこうにも。
とはいえ、2人の関係が決定的に壊れる出来事に際して、ジャックの嫌なところをフレイアが言ってくれるし、フレイアの嫌なところもジャックが(本人に向かってではないけれど)言葉にしてくれるので、そこで溜飲が下がってその後の2人の再接近が許せるのは、小説としていいのか悪いのか。

それこそ、主役2人よりも(以下ネタばれ)フレイアの親友キャットと、冒頭でフレイアを振るマイケル のロマンスの方が、描写は少なくてもとても感情移入できていい。
こっちで1本話ができそうじゃないですか。

オーリ配役(by秋林さん)のブレットは、とてもオーリでした(笑)。
でも、なぜか私の脳内ではジャックも黒髪巻き毛ちゃん……。(本当は麦わら色の髪です)

まんがは読書記録の数から外して別立てしたものの、BL小説は相変わらず一般の本と混ぜて数えていて、いいのかしらんと(自分的に)迷うところもあるけれど、木原音瀬は入れてもいいような気がする。

いわゆるBLなので細かいあらすじは略。

痛い登場人物も強引に読者に共感もたせてしまう木原音瀬作品の中で、まっとう度の高い人たちのほのぼのした恋愛を描く一群がある。
「恋愛時間」とか、「恋について」とか。「美しいこと」も、かろうじてまっとう……?(いや女装癖の時点でまっとうでないってば/汗)
この本もその一群に含まれ、しかもさらにまっとうな人たちの話でした。
木原作品は、あまりの痛さ切なさに、自分の精神状態がよろしくないときには手に取るのが恐くてしばらく離れていることもあるのですが、たまに出るまっとう・ほのぼの路線の作品をうっかり手にとってまた引き戻されちゃうんだよな……。


真保裕一のフジテレビとタイアップで映画化前提だった「アマルフィ」(感想はこちら→http://yogiribook.diarynote.jp/201012302201524044/)の続編。こちらも映画化されている。

ヨーロッパの小国・アンドラで殺人事件発生。外務省邦人保護担当の黒田は、アンドラからのSOSを受けてスペイン・バルセロナから現地に向かい、一人の日本人女性と出会う。彼女は何者なのか。ふくれあがる疑念とともに、黒田にも危険が迫る。外交官は、どこまで捜査にかかわれるのか。自身のアイデンティティまで問われかねないぎりぎりの状況を切り開いていく黒田だが、そこには巧妙な罠が張り巡らされていた。「外交官黒田康作」シリーズ第3弾、最高傑作。


ブックオフで、出待ちしていた本と合わせ技で送料無料にするために買った本。
前作「アマルフィ」もきちんと面白い話だったので、安心して手に取れる。
真保裕一らしく国同士の駆け引きが大胆かつもっともらしい設定で、その中で個人の思惑がずれていくのが面白かった。

とはいえ、キャラクターで見るとあまり個性らしい個性が立ってないところが残念かなぁ。
黒田は1人で職務に忠実で真面目で弱者に優しくてすべての謎を説明してくれるのが便利すぎ。
織田裕二だからしかたないか(笑)。
先日、ペットロスに関するシンポジウムへ行ったところ、大村英昭氏のお話がとてもおもしろかった上に素直に理解できる内容だったので、他にどんな本を書いているんだろう?と思ったらずいぶんと著名な社会学者だった(冷汗)。
取り合えずとっつきやすそうな、最近出た嵐山光三郎との対談「上手な逝き方」という本を読んでみようか、と思ったら。


asahi.com  2011年11月28日
集英社が新書「上手な逝き方」を絶版 「著作権侵害」

 集英社は28日までに、第三者の発言を無断で掲載していたとして、昨年11月に出版した新書「上手な逝き方」を絶版にすることを決めた。「著作権、著作者人格権を侵害している」と判断、すでに回収を始めている。

 同書は、死をテーマに作家・嵐山光三郎さんと宗教社会学者・大村英昭さんが対談、共著として発売された。だが、実際の対談には、本願寺仏教音楽・儀礼研究所常任研究員の多村至恩さんが同席。多村さんの発言の一部が大村さんの発言として、許可なく編集され、1万8千部が発行された。
http://www.asahi.com/culture/update/1128/TKY201111280450.html


あらら~。
そんなわけで密林にはこの本のページすらなくなっているのだけれど、地元図書館で検索すると普通にヒットする不思議(笑)。
職場のある区の図書館で借りて読みました。

とはいえ、話はあまりおもしろくない。というのも、嵐山光三郎も大村氏も、おおむね考え方や価値観は同じ方向を向いているから。
ペットロスのシンポジウムでは、ペットにまつわる様々な立場の人の中で仏教を踏まえた社会学者としての科学的な視線が信頼感を醸していたのだけれど、仏教の話となると、どうしても大村氏の浄土真宗のことを話すことになり、客観性が薄まってしまったのがちょっと残念だった。

でも関西弁で柔らかくはっきり物言うところはやっぱりいいなぁと思う(笑)。
二人は仇同士であった。二人は義兄弟であった。そして、二人は囚われの王と統べる王であった―。翠の国は百数十年、鳳穐と旺厦という二つの氏族が覇権を争い、現在は鳳穐の頭領・〓(ひづち)が治めていた。ある日、〓(ひづち)は幽閉してきた旺厦の頭領・薫衣と対面する。生まれた時から「敵を殺したい」という欲求を植えつけられた二人の王。彼らが選んだのは最も困難な道、「共闘」だった。日本ファンタジーの最高峰作品。


このあらすじを読むと「BL?」と思うけれど、けっしてそんなことはなく、架空の古代歴史もの、といった感じ。
2人の王はできすぎなくらいの立派な人物なのだけれど、それでもひとつの国には様々な人々がいて、それぞれに価値観が違い、けっして2人の王のように10年先50年先を見ているわけではなく、王にそむいたりもする。それを統べることの困難さが丹念に描かれている。
戦争も起こるけれども戦争のスペクタクルはこの話の主眼ではない。
だから、どちらかというと、組織の中で生きている人のほうがこの物語を楽しめるかもしれない。

というか私はすごく楽しかった!
この著者の小説は初めて読んで、最初は絢爛豪華な中華風ファンタジーかと思ったけれどもどんどんのめりこんでいって、結局(飲んでかえって)夜中の1時半に帰宅してから、4時までノンストップで読み通した。
BL的萌えはないけれど、とても燃えた。

まあ、強いて言えばこの2人の王の息子たちが萌えかもしれないけれども、強いてまで萌えを探さなくてもいいんだよ。>自分
先日見た映画(感想はこちら→http://yogiribook.diarynote.jp/201205182247022356/)の原作を読んだ。

てっきりハーレクインのようなロマンス小説だと思い込んでいたので、読み進めながら「なんだか調子がでないなぁ」といぶかりながら、読むスピードも出ずにこつこつと1週間ほどかけて読み通した。途中で「なんでこんなに時間がかかるんだろう?」と思って総ページ数を確認したら、500ページを超えていた。そりゃ長いわ。
読み終わってから、ああ、いわゆるロマンス小説じゃないんだ~どちらかといえば一般恋愛小説なんだ~と納得。
ちなみに片岡義男があとがきを書いている。

先に映画を見ていたので、この原作から何をどうかいつまんで映画にしたのかしら、と考えながら読んでいた。
そういう意味では、かなり忠実に映画化している。最後の1章を除いて。

映画では、最後の1章にあたる部分(ネタばれしないように説明すると、いったん別れた2人がよりを戻すまで)をかなり端折っているけれど、小説ではとても丹念に、執拗に、ロマンス小説を期待している読者にはとても不親切に書き込んでいる。
でもここの、生活環境や文化が正反対の2人がなんとか歩み寄る部分が、実は一番面白かった。(映画と違うので初見で興味が引かれたから、というのもあるだろうけれど)

でも、薦めてくれた友人には悪いけど、これは私が求めていた「年下の男の子ががんばる年の差恋愛小説」じゃないんだ!
私はもっと軽くてらぶらぶなロマンス小説が読みたいんだ!
ようするに、BLでは性別(というか性が同じこと)が恋愛の障壁になっているけれど、それが年齢差(しかも女性が上)になっているような、そんな小説が読みたいんだーだーだー………


以前住んでいた街のおたくフレンドリーな書店に行って、BLマンガを買うついでにまともな本も1冊くらい買おうかしら、と思って翻訳文庫コーナーに行ったらこの本が目に留まった。

500年の時を生き延びた稀代の古書“サラエボ・ハガダー”。それはなぜ造られ、どんな人々の手で守られてきたのか?鑑定をまかされたハンナがその本の中で見つけた白い毛、塩の結晶、ワインの染み、留め金の痕跡、蝶の羽が、15世紀スペイン、17世紀ヴェネチア、19世紀ウィーン、20世紀サラエボで起きた驚くべき苦難の物語を雄弁に語っていく!運命に翻弄されながらも激動の歴史に耐えた1冊の美しい稀覯本と、それにまつわる人々を描いた歴史ミステリ。翻訳ミステリー大賞受賞作。 (文庫上巻裏書き)


歴史ミステリは大好きなので、躊躇わず購入。結構のめりこんで5日で読了。

正確に言えば、主人公は歴史の謎解きをするわけではない(過去の歴史は主人公の現代パートとはまったく独立して語られるし、まったくの著者のフィクション)。
でも、中世イベリア半島以降、歴史のうねりの中で、時に迫害され、時に利用されてきたユダヤ人の歴史を、現代から遡る形で紐解いていく。

現代の主人公サイドでは、ハガダーを鑑定・修復する主人公と母親との確執、ロマンス、そして贋作とのすり替え疑惑事件が次々起こって飽きさせない。

”サラエボ・ハガダー”は実在する本で、19世紀以降のエピソードについては現実を踏まえたフィクションとなっている。第2次大戦と、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の2度の戦火の中でこの本を学芸員が命をかけて守ったそうで、学芸員ってすばらしい、と思わされる。

それと、紛争直後のサラエボの描写と、サラエボの学芸員の次の台詞が非常に印象に残っている。ちょっと長いけれど、自分のメモのために引用。(文庫上巻p59~60)

「(前略)ぼくたちの大切な街、オリンピックが行われた理想の街サラエボでは、紛争など起きるはずがなかった。この街の住人は充分に知的で、充分に冷静だから戦うはずがないと思ってた。でも、かならずしも愚かで野蛮な人間でなくても、愚かで野蛮な死に方はできる。いまぼくたちはそれを痛感しているよ。でも、紛争が始まって最初の数日のぼくたちの行動はちょっと浮ついていた。(中略)十人ぐらいの若者が狙撃手に撃たれても、ぼくたちはまだその意味をきちんと理解しなかった。国際社会が止めてくれると思ってたんだ。ぼく自身もそう信じていた。ほんの何日か我慢していれば、片がつくと思ってた。(後略)」

先日、「猫弁」を読み終わってネットで相変わらず「年下の男の子ががんばっちゃう恋愛もの」を探して、よし、明日会社帰りにこの本探そう!と目星を付け、翌日の朝の通勤電車で読むつなぎの本を、我が家の書棚の積読本コーナーで物色していたところ。

あれー、この本どういう内容だっけ?

と思って手に取った本が、17歳の男子高校生が32歳の女教師と恋をする話でした。

灯台下暗し。

戦争が終わって何年か経ったとき、十七歳のぼくは、三十二歳になった彼女と再会した。小学生の頃に憧れていた女の先生エマが、ぼくの高校の教師として転任してきたのだった。年寄りばかりの先生たちの中では、彼女はきれいだったし、いつも励ましてくれるいい先生だった。ぼくは胸をときめかせた。だが、ぼくの毎日はラグビーと進学のための勉強でいっぱいだったし、エマの方は、婚約者を戦争で亡くし、今は同僚の先生とつきあっているという噂だった。だから、普通ならあんなことは起こるはずがなかった。なのに、ぼくたちは恋に落ちた。ほかに何も、目に入らなくなった…。年上の先生と恋に落ちた十七歳の少年ロビーの日々を、ラグビーチームの個性豊かな仲間たちや、ロビーに惹かれる素朴なクラスメートの少女、理不尽な校長や大好きな祖母など、まわりの人々との交流の中で描きだす、みずみずしい物語。自信と劣等感、粗雑さと繊細な優しさが混在し、生命力に溢れる「十七歳」の肖像が、くっきりと浮かびあがる、巨匠ウェストールによる、深く心を揺さぶられる青春の物語。


うーん、でも17歳のぼくは勉強も出来てラグビーも強いけど計算高くて、若さゆえ目先のことしか考えてなくて、彼女が大好きなんだけどどちらかといえばただの熟女好きって気がするのはなぜだろう…。
そういう意味で萌えはなかったのですが、なにせウェストールですから心理描写に容赦がない(容赦がないから、「ぼく」のこともただのわんこに描かない)ので、読み応えはありました。

こうして逆年の差カップルものを続けて読んだり見たりしていると、だんだん自分のツボが分かってきますね。
たとえアナタがおばさんでもぼくはアナタが好きなんですー!と、年齢の壁を飛び越えて愛を捧げてくれる、ってのは、「年齢」を「男同士」に置き換えればつまりはBLなんだろうなー。
職場近くの書店で平台に並んでいた本(「陽だまりの彼女」)を読み、その隣にあった本(「年下の男の子」)もおもしろかったので、同じ平台に並んでいた本からこれを選んだ。
なんだか今は久しぶりに本が読みたい気分なんだ!

猫いっぱいの事務所につとめる弁護士・百瀬太郎(ももせたろう)。彼の元には一風変わった依頼が持ち込まれる。
結婚相談所に通って運命の人を探しながら、事務所では依頼人の幸せを考える日々に、新たな難題が舞い込んだ。
「霊柩車が盗まれたので取り戻してほしい!」
人と人がつながり、最後には誰にも予想できない結末が待っている。
笑いあり涙あり、一級のハートフル・ミステリー!


TBS・講談社ドラマ原作大賞第3回受賞作。
つい先日放送されていたドラマは、気になっていたのに気づいたら見逃していた。それを思い出して取り合えず原作を手に取った。
バラバラに起こった事件が最終的にひとつに収束していく話で、実を言えば最初はそれぞれの話になかなか関心がもてなくて乗り切れなかったのだけれど、それぞれのつながりが見え始めたら俄然おもしろくなった。
そして最後の最後に、まさかここまで、と思うストーリーラインまで繋がって大団円。
うまいよなぁ、と膝を打った。

始めになかなか話に乗れなかったのは、登場人物がみんな一癖どころか癖ありすぎな人たちばかりだったから。ヒロインがたとえ「眉が太く一文字」で、「ドスの効いた声」でつっけんどんな話し方しかしてなくても、ドラマで杏が演じればそれだけで感情移入できるんだろうけれど、文字だけで読むと、ちょっとどこが可愛いのよこの子(注:可愛いという設定ではありません)となってしまう。主人公然り。
それと、様々な事件が繋がっていてひとつに収束していくのは面白い反面、どうしても偶然要素が増えてくるし世界が小さくまとまってしまう嫌いもある。

「猫弁」という設定を思いついたところがこの話の成功ポイントだと思うけれど、話の発端は「遺体の誘拐」を発想したところじゃなかろうかと、なんとなく思った。
逆に言えば「遺体の誘拐」という発想から、魅力的な主人公を生み出したとしたらそれはすごいと思う。

著者はもともとシナリオを書いていた人だそうで、作品がなかなか映像化されず、それで小説を書いたそうで、ドラマ化に際しても著者が脚本を担当したそうだ。
やっぱりドラマも見てみたい。
マンションを買ってしまった、37歳課長補佐の恋の行方は?

銘和乳業勤務のわたし(川村晶子)は37歳にしてマンションを購入。
契約翌日、新製品の健康ドリンクの宣伝用フリーペーパーをめぐって
トラブルが発生。価格欄が空白のまま刷り上ってしまったのだ。
これは、徹夜で空白部分にシール貼りをするしかない。
担当者のわたしは、ピーアール会社の23歳の契約社員・児島くんと
夜を徹してのシール貼り作業を敢行。なぜか二人は話が合ったのだが…。
[解説・大浪由華子]


昨日読了した「陽だまりの彼女」を書店に買いに行ったとき、平台に並んで隣にこの本がありました。
あらすじを読むに付け今のワタシに非常に身につまされる設定で、むしろこっちのほうが読みたい、と思ったものの、いちおう初志貫徹して先の本を購入。3日かけて読み終わって、さて、満を持してこちらの本を買って帰りました。

で、一気読みしてしまったわけです(笑)。

14歳年下の男の子がアラフォー女子を熱心に追いかけてくれるなんて、ある意味「陽だまりの彼女」よりも激しいファンタジーだということは百も二百も承知の上ですが、こちらのほうが女性の気持ちに非常にしっくり来たわけです。
偶然ながらも、「陽だまり~」もこちらも主人公は企業の広告・宣伝関係の仕事をしていて、前者もそれなりに実情を踏まえていましたがこちらのほうがより描写が詳細でリアルだし。
マンションを買ってしまった出不精なアラフォー女子の繊細な感情の描写も、まるで自分のことを読まされているよう。

とはいえ、まあつまり、

一条ゆかり「砂の城」もしくは「恋のめまい 愛の傷」に萌えまくったのと同じツボにがっちり深くヒットした、という次第です。
萌えるよ! 若い男の子が迷いなく自分を好きになってくれて大切にしてくれてめちゃくちゃがんばっちゃうところなんて!! 主人公うらやましすぎ!!!

この2作品にアンテナの立った貴女は、明日すぐ書店に走ってこの本を買い給え。
決して後悔しないと保証します!
幼馴染みと十年ぶりに再会した俺。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、俺には計り知れない過去を抱えているようで―その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる! 誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさもすべてつまった完全無欠の恋愛小説。


先日のイタリア旅行のツアーに母親と参加していた男子(25歳)が読んでいたので、ちょっと関心を引かれて読んでみた。
事前にこの著者の予備知識はなかったのだけれど、ファンタジーノベル大賞受賞者だそうだ。

ちなみに、文庫オビには
「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」
とある。

が、ううーん、微妙にツボを外しているのでドキドキもキュンキュンもきゅーっと切なくもならなかった……。
たぶんこのカップルの描写が、完全オトコのコ目線でラノベ的だからじゃないかしら。
ラノベ的、というか現実的でないのは、この設定(というかオチ)ならば致し方ない部分もあるのだけれど、
それはオチを知ってから振り返れば納得するのであって、初読の際には感情移入を阻む要因になりかねない。
それ以外の部分では、例えばお仕事描写とか、お互いや家族を思いやる台詞回しとか、地に足の着いたいいところもあるんだけどなぁ。
二度目に、オチを知ってから読めばいろいろ納得もするのだろうけれど、1度目に感情移入
できていないと2度読む気にもなれなくて。

それと、なんだかこんなオチでもっとツボにくる翻訳小説かマンガの短編が過去に2、3本はあったような気がする。
だから、最初にこのネタに出会った人ならば感動するかもしれないけれど、どうにも既視感が拭えないのが、こそばゆい。

それにしても驚いたのは、主人公たちの地元が私の実家のある市で、彼女の勤め先のあるオフィスビルに私も勤めていたことがあり、彼らが一緒に暮らし始める街の沿線に私も住んでいたことがある、という、
なんとも不思議な偶然が重なっていること。
著者は東京出身でこの市との縁はなさそうだけれど、なんだってこんなマイナーな市を舞台に選んだかな?

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