愛の奴隷
2009年5月26日 読書記録第4紀(07.10~)
受の片足が不自由、と聞いて、とうとうBLもここまで来たか、と俄然気になり、ようやく古本で入手しました。
無口な攻と、自分に自信がなくて本心を伝えられない受が、お互いに「自分だけが相手を想っている」と思いながら関係を持ち続けて10年。とある事件をきっかけに、お互いの気持ちが通じ合う、という話。
受の隣人である当て馬くんもいい味を出していて、恋愛部分はよかったのだけれど。
それゆえに、その他の部分のご都合な設定があっちこっちで引っかかって、ちょっぴり残念な読後感ではありました。
攻の実家がヤクザってことになってるんですが、こんな温いヤクザなら、他の設定でもこの話は成立したんじゃなかろうか……。
それと、当て馬くんの伯父である刑事さんを使いきれてなくてもったいない。というかあんな無礼な公務員がいたら訴えられるよ。4課だからいいのか?
受の片足不自由な原因が小児麻痺、ってのはちょっと古すぎやしないでしょうか? Wikiによれば、日本では1981年にポリオは根絶されているそうなので、この主人公が最後の患者だとしても、小2で発病したと記述があるので10年前の話になってしまいます。
ちゃんと病気のことを調べて書いてあるようなので、そこの詰めが甘いのが気になる……。
無口な攻と、自分に自信がなくて本心を伝えられない受が、お互いに「自分だけが相手を想っている」と思いながら関係を持ち続けて10年。とある事件をきっかけに、お互いの気持ちが通じ合う、という話。
受の隣人である当て馬くんもいい味を出していて、恋愛部分はよかったのだけれど。
それゆえに、その他の部分のご都合な設定があっちこっちで引っかかって、ちょっぴり残念な読後感ではありました。
攻の実家がヤクザってことになってるんですが、こんな温いヤクザなら、他の設定でもこの話は成立したんじゃなかろうか……。
それと、当て馬くんの伯父である刑事さんを使いきれてなくてもったいない。というかあんな無礼な公務員がいたら訴えられるよ。4課だからいいのか?
受の片足不自由な原因が小児麻痺、ってのはちょっと古すぎやしないでしょうか? Wikiによれば、日本では1981年にポリオは根絶されているそうなので、この主人公が最後の患者だとしても、小2で発病したと記述があるので10年前の話になってしまいます。
ちゃんと病気のことを調べて書いてあるようなので、そこの詰めが甘いのが気になる……。
ウォールフラワー
2009年5月23日 読書記録第4紀(07.10~)
なぜこの本を読もうと思ったかというと、先日、アメリカ図書館協会が毎年発表している、「1年間で、図書館に置くのをやめろと抗議が来た児童書ベスト10」のリストに入っていたから。
ALA、「2008年に最も批判を受けた図書」を公表
http://current.ndl.go.jp/node/12619
Attempts to remove children’s book on male penguin couple parenting chick continue
http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2009/april2009/nlw08bbtopten.cfm
下のリストにはトップ10すべてが紹介されていて、批判された理由も載っています。
栄えあるトップ1のタンタンタンゴは仕方ないとして、ライラの冒険シリーズとかカイトランナー(映画も公開されてました。原作邦題は「君のためなら千回でも」)も入っているのでなんというかホモフォビアや宗教原理主義者の脳筋さ加減を笑うリストと思っております。
で、この本の批判理由は
Drugs, Homosexuality, Nudity, Offensive Language, Sexually Explicit, Suicide, Unsuited to Age Group
トップ10の中でも際立って批判理由の数が多い。というか、まあ、主に2番目の理由に引っかかって読んでみました(正直者)。
これは、自分の中のナイーブな部分に突き刺さる、傑作YA小説でした。
普通よりもちょっと感じやすくて不安定な心を持つチャーリーが、高校入学前日から、自分の心を自分が直接知らない「トモダチ」に宛てて手紙に書く。一方的に誰かに宛てて送る手紙で綴られる1年間の物語です。
ちなみにウォールフラワー、というのは、作中の主人公を評した言葉を引用すると、
「きみは観察する。そのことについて、なにも言わない。ただ、すべてを理解しているんだ」
ということであって、けっして日本語の、そして訳者が(多分誤解して)ルビを振っているような「壁の花」とイコールでは あ り ま せ ん 。
チャーリーは、内気なのではなくて、人と関われない、関わり方がわからない、パラノイアというか離人症というか、そのような心の病と正常との境目にたたずむ少年で、その彼が自分の不安定な心情を一人称で綴っているので、ちょっぴりアルジャーノンとか、最近も翻訳SFで自閉症の主人公一人称小説が出てましたが(未読)、それに近い雰囲気もあります。
ただ、彼の周囲の人たち――両親と兄姉、大切な友達、一人の教師――がとても理解があるまっとうな人たちなので、リアルではないかもしれないけれど、救われてます。
うがった読み方をすれば、「周囲の友達とうまく付き合えないけど、ケンカは強いし勉強も出来る、しかも”変わってる”ことにも理由がある、僕ってトクベツ」という中2病な人に受けるキャラクターなのかもしれませんが。
YA小説なので読みやすいしそれほど長くないし、休日出勤で埼玉の奥地まで往復した5時間で読みきりました。
ああ、堪能。
あ、そうそう、拒否理由その2は、主人公の友達にゲイがいる、というだけ(でもないけど)です。このゲイの友達とその彼氏がまた映画「同級生」っぽくってねぇ……。
ALA、「2008年に最も批判を受けた図書」を公表
http://current.ndl.go.jp/node/12619
Attempts to remove children’s book on male penguin couple parenting chick continue
http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2009/april2009/nlw08bbtopten.cfm
下のリストにはトップ10すべてが紹介されていて、批判された理由も載っています。
栄えあるトップ1のタンタンタンゴは仕方ないとして、ライラの冒険シリーズとかカイトランナー(映画も公開されてました。原作邦題は「君のためなら千回でも」)も入っているのでなんというかホモフォビアや宗教原理主義者の脳筋さ加減を笑うリストと思っております。
で、この本の批判理由は
Drugs, Homosexuality, Nudity, Offensive Language, Sexually Explicit, Suicide, Unsuited to Age Group
トップ10の中でも際立って批判理由の数が多い。というか、まあ、主に2番目の理由に引っかかって読んでみました(正直者)。
これは、自分の中のナイーブな部分に突き刺さる、傑作YA小説でした。
普通よりもちょっと感じやすくて不安定な心を持つチャーリーが、高校入学前日から、自分の心を自分が直接知らない「トモダチ」に宛てて手紙に書く。一方的に誰かに宛てて送る手紙で綴られる1年間の物語です。
ちなみにウォールフラワー、というのは、作中の主人公を評した言葉を引用すると、
「きみは観察する。そのことについて、なにも言わない。ただ、すべてを理解しているんだ」
ということであって、けっして日本語の、そして訳者が(多分誤解して)ルビを振っているような「壁の花」とイコールでは あ り ま せ ん 。
チャーリーは、内気なのではなくて、人と関われない、関わり方がわからない、パラノイアというか離人症というか、そのような心の病と正常との境目にたたずむ少年で、その彼が自分の不安定な心情を一人称で綴っているので、ちょっぴりアルジャーノンとか、最近も翻訳SFで自閉症の主人公一人称小説が出てましたが(未読)、それに近い雰囲気もあります。
ただ、彼の周囲の人たち――両親と兄姉、大切な友達、一人の教師――がとても理解があるまっとうな人たちなので、リアルではないかもしれないけれど、救われてます。
うがった読み方をすれば、「周囲の友達とうまく付き合えないけど、ケンカは強いし勉強も出来る、しかも”変わってる”ことにも理由がある、僕ってトクベツ」という中2病な人に受けるキャラクターなのかもしれませんが。
YA小説なので読みやすいしそれほど長くないし、休日出勤で埼玉の奥地まで往復した5時間で読みきりました。
ああ、堪能。
あ、そうそう、拒否理由その2は、主人公の友達にゲイがいる、というだけ(でもないけど)です。このゲイの友達とその彼氏がまた映画「同級生」っぽくってねぇ……。
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トワイライト 上
2009年4月15日 読書記録第4紀(07.10~)
映画が妙に気に入ったので、原作に手を出してみた。
原作ものの映画化の場合、たいてい原作のほうが気に入るのですが、これは映画のほうがいい、と思いました。
上巻を読んだ時点で、原作は吸血鬼ものというよりもティーンズ・ラブロマンス。吸血鬼という設定は「ちょっと変わってるけど誰からもゴージャスだと思われてワタシのことだけ好きな彼」の”ちょっと変わってる”要素でしかない。一風変わった彼は、人外だから変わったリアクションでもいいのかもしれないけれど、現時点では、急に怒り出すタイミングと機嫌を直すタイミングのパターンが読めなくて、感情移入しにくい。なので、映画の、そして吸血鬼ものの最大の見所である、「彼女への愛と食欲(というか本能)の葛藤に苦しむいい男」のその葛藤が見えにくくなっていて、萌えられない。
彼の葛藤が見えないので、主人公と彼がじりじりと間合いを詰めていく段階も、ちょっと冗長な感じが否めない。
むむむ、もったいない。
と、思うのもきっと映画のスピーディな展開が頭に入ってるからだろうとは思います。
この先どうなるかはわかっているんだから、焦らしてないでさっさと山場を見せろ!と思うのかしら。
とはいえ、上巻ではまだ吸血鬼バトルが始まっていないので、アクションが増えればおもしろくなってくるかも。
映画はポイントを抑えて上手く刈り込んであるなぁと、あらためて感心しました。
原作ものの映画化の場合、たいてい原作のほうが気に入るのですが、これは映画のほうがいい、と思いました。
上巻を読んだ時点で、原作は吸血鬼ものというよりもティーンズ・ラブロマンス。吸血鬼という設定は「ちょっと変わってるけど誰からもゴージャスだと思われてワタシのことだけ好きな彼」の”ちょっと変わってる”要素でしかない。一風変わった彼は、人外だから変わったリアクションでもいいのかもしれないけれど、現時点では、急に怒り出すタイミングと機嫌を直すタイミングのパターンが読めなくて、感情移入しにくい。なので、映画の、そして吸血鬼ものの最大の見所である、「彼女への愛と食欲(というか本能)の葛藤に苦しむいい男」のその葛藤が見えにくくなっていて、萌えられない。
彼の葛藤が見えないので、主人公と彼がじりじりと間合いを詰めていく段階も、ちょっと冗長な感じが否めない。
むむむ、もったいない。
と、思うのもきっと映画のスピーディな展開が頭に入ってるからだろうとは思います。
この先どうなるかはわかっているんだから、焦らしてないでさっさと山場を見せろ!と思うのかしら。
とはいえ、上巻ではまだ吸血鬼バトルが始まっていないので、アクションが増えればおもしろくなってくるかも。
映画はポイントを抑えて上手く刈り込んであるなぁと、あらためて感心しました。
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白洲次郎 占領を背負った男 上 (講談社文庫)
2009年3月14日 読書記録第4紀(07.10~)
姉の家に遊びにいってお茶をしながらおしゃべりしていて、白洲次郎のドラマの話になった。
そのときは、わたしはBShiで一足先に見ていて、姉はまだ見ていなかったので、
「ドラマ、かなりよくできてるよ。今度白洲次郎の本も読んでみようかと思った」
といったところ、姉が
「本持ってるよ。読み終わってるから貸してあげるよ」
と言って文庫二冊を持たせてくれました。
とりあえず上巻を読み終わったのでここに報告。
読み始めて数10ページほどで、「これ、なんだか社歴の長い、下手に文章に自信のある社員が書いた社史みたい」(どういう比喩だ……)という印象にとらわれて、なんだかこそばゆくなりました。
著者略歴を見てみたら、やはり普通の経済人で文章も書く、という人のようです。
とりあえずこういう、ドキュメンタリなのにフィクション描写が混じる文体は、どこまでが客観的事実でどこからが著者の想像なのか、いちいち考えながら読まなきゃならないので苦手です……。
だったら山崎豊子のように完全フィクションの体裁で書くか、塩野七生くらいもっと客観事実寄りに書いてくれるといいのだけれどなぁ。
下巻に入る前に別の本を読み始めてしまったので、いったんお休み。
そのときは、わたしはBShiで一足先に見ていて、姉はまだ見ていなかったので、
「ドラマ、かなりよくできてるよ。今度白洲次郎の本も読んでみようかと思った」
といったところ、姉が
「本持ってるよ。読み終わってるから貸してあげるよ」
と言って文庫二冊を持たせてくれました。
とりあえず上巻を読み終わったのでここに報告。
読み始めて数10ページほどで、「これ、なんだか社歴の長い、下手に文章に自信のある社員が書いた社史みたい」(どういう比喩だ……)という印象にとらわれて、なんだかこそばゆくなりました。
著者略歴を見てみたら、やはり普通の経済人で文章も書く、という人のようです。
とりあえずこういう、ドキュメンタリなのにフィクション描写が混じる文体は、どこまでが客観的事実でどこからが著者の想像なのか、いちいち考えながら読まなきゃならないので苦手です……。
だったら山崎豊子のように完全フィクションの体裁で書くか、塩野七生くらいもっと客観事実寄りに書いてくれるといいのだけれどなぁ。
下巻に入る前に別の本を読み始めてしまったので、いったんお休み。
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ブラック・ダリア
2009年3月6日 読書記録第4紀(07.10~) コメント (7)
なぜかいまさらブラック・ダリア。しかもこれが初エルロイ。
映画はL.A.コンフィデンシャルだけ鑑賞済み。
いやー長い長い。おかげでずいぶん間が空いてしまったけれど、これだけ長いのに飽きさせないのはすごいなぁ。
現実にあって迷宮入りした殺人事件がモチーフだというので、どうやって事件にけりをつけるのか、もしかして「殺人の追憶」みたいに、結局答えを出さない宙ぶらりんのまま終わるのか?!と冷や冷やしながら読み進めましたが、フィクションとしてきちんと事件の犯人を出し、しかもそれを世の中に現さないための理由付けがしっかりしていてよかったです。
さらに最後に主人公が幸せに終わったので、読後感もよいし。
久しぶりに充実した小説体験でした。
【追記】
そういえば、この話を読んでいる間中、なぜか主人公を黒人に脳内変換している自分が不思議でした。(本当はドイツ系移民)
映画はL.A.コンフィデンシャルだけ鑑賞済み。
いやー長い長い。おかげでずいぶん間が空いてしまったけれど、これだけ長いのに飽きさせないのはすごいなぁ。
現実にあって迷宮入りした殺人事件がモチーフだというので、どうやって事件にけりをつけるのか、もしかして「殺人の追憶」みたいに、結局答えを出さない宙ぶらりんのまま終わるのか?!と冷や冷やしながら読み進めましたが、フィクションとしてきちんと事件の犯人を出し、しかもそれを世の中に現さないための理由付けがしっかりしていてよかったです。
さらに最後に主人公が幸せに終わったので、読後感もよいし。
久しぶりに充実した小説体験でした。
【追記】
そういえば、この話を読んでいる間中、なぜか主人公を黒人に脳内変換している自分が不思議でした。(本当はドイツ系移民)
私たちがやったこと (新潮文庫)
2009年2月17日 読書記録第4紀(07.10~)
アメリカの女性現代作家の短編集。恋愛に没頭するあまり現実と妄想のあわいをさまようような小説。簡潔な表現で、日本語がきれい。
基本的に主人公は「わたし」で恋人は「あなた」。
なんとなく男女の恋愛の話しかと思って読んでいたのだけれど、ときどきふつうに女性同士の恋人の話が出てきて、そういや英語で書いたらIもYouも性は不明なので、男女の話だと思って読んでいた作品も、もしかしたら女性同士だったのかもしれない。
解説に「レズビアン作家」とてらいもなく書かれていて、「そんなつもりでこの本を選んだんじゃなかったのに」とちょっと涙目。
基本的に主人公は「わたし」で恋人は「あなた」。
なんとなく男女の恋愛の話しかと思って読んでいたのだけれど、ときどきふつうに女性同士の恋人の話が出てきて、そういや英語で書いたらIもYouも性は不明なので、男女の話だと思って読んでいた作品も、もしかしたら女性同士だったのかもしれない。
解説に「レズビアン作家」とてらいもなく書かれていて、「そんなつもりでこの本を選んだんじゃなかったのに」とちょっと涙目。
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現代スペイン読本 知っておきたい文化・社会・民族
2009年2月10日 読書記録第4紀(07.10~) コメント (3)
ただいま絶賛スペイン強化月間。<なにそれ
この本は、現代の……というかフランコ独裁が終わった1975年以降のスペインについて歴史・文化・政治経済等々15のテーマでそれぞれの分野の専門家が書いた文章をまとめたもの。1つのテーマについて20ページ前後が割かれているので、前から順に読む必要はなく、関心のある章を拾い読みしてもいい。
というか、書き手がばらばらなので内容の濃度や読みやすさもばらばら。第1章の、フランコまでのスペインの歴史を概観した章など校正漏れの誤字・脱字が散見されてかなりどーしよーかと思う内容だったけれど、現代史の部分は、自分の記憶にもうっすらと残ることがきちんと説明されていて非常におもしろかった。
ちなみにわたしにとってのスペイン史とは、
アルタミラ→密偵ファルコ→アルハンブラ宮殿→レコンキスタ!→女王フアナ→Fresh & Blood(カルロスI世)→(この辺でアラトリステ?)→マチュリン先生→ガウディ→ゲルニカ→パンズ・ラビリンス→風の影→バルセロナ・オリンピック→マドリッドの列車爆破テロ
って感じで、なんかすごく間違ってるらしいので(「誰がために鐘はなる」は? ドン・キホーテは? コロンブスは?)、この本を読んで整理できて、これからスペイン映画を見ても時代背景がよく分かると思います。(……それか)
というか、吉田彩子先生(「スペインの現代社会」担当)! 超絶おもしろい文章書くなぁ。たびたびスペインに滞在していて、スペインとスペイン人を愛しているけれどだからこそ辛らつな物言いもできる、というか。大学の先生なんだけれど、スペインについてのエッセイ書いてくれないかなぁ。
この本は、現代の……というかフランコ独裁が終わった1975年以降のスペインについて歴史・文化・政治経済等々15のテーマでそれぞれの分野の専門家が書いた文章をまとめたもの。1つのテーマについて20ページ前後が割かれているので、前から順に読む必要はなく、関心のある章を拾い読みしてもいい。
というか、書き手がばらばらなので内容の濃度や読みやすさもばらばら。第1章の、フランコまでのスペインの歴史を概観した章など校正漏れの誤字・脱字が散見されてかなりどーしよーかと思う内容だったけれど、現代史の部分は、自分の記憶にもうっすらと残ることがきちんと説明されていて非常におもしろかった。
ちなみにわたしにとってのスペイン史とは、
アルタミラ→密偵ファルコ→アルハンブラ宮殿→レコンキスタ!→女王フアナ→Fresh & Blood(カルロスI世)→(この辺でアラトリステ?)→マチュリン先生→ガウディ→ゲルニカ→パンズ・ラビリンス→風の影→バルセロナ・オリンピック→マドリッドの列車爆破テロ
って感じで、なんかすごく間違ってるらしいので(「誰がために鐘はなる」は? ドン・キホーテは? コロンブスは?)、この本を読んで整理できて、これからスペイン映画を見ても時代背景がよく分かると思います。(……それか)
というか、吉田彩子先生(「スペインの現代社会」担当)! 超絶おもしろい文章書くなぁ。たびたびスペインに滞在していて、スペインとスペイン人を愛しているけれどだからこそ辛らつな物言いもできる、というか。大学の先生なんだけれど、スペインについてのエッセイ書いてくれないかなぁ。
オバマ・ショック (集英社新書 477A)
2009年1月23日 読書記録第4紀(07.10~)
町山智浩氏の映画ブログはよく読んでいて、キワモノ的でありながらアメリカに10年以上住んでいて現地の実際を知っていて、さらに該博な知識とスパッとものを言い切る物言いが面白いのだけれど、まさに時流に乗っかってこんな対談本を出していたので手に取ってみた。
タイトルこそ米新大統領の名前を関しているけれど、オバマの話が出てくるのは200ページの本の140ページ以降。そこまでは、アメリカの世界恐慌あたりからの政治史、つまり「オバマまで」のアメリカがどうだったのかを説明してくれているので、オバマを理解するのにとても役に立つ。
ブッシュの8年の後のオバマ、ではなくて、共和党の30年の後の民主党のオバマ、なのだね。(もちろんこの30年の間に民主党大統領もいたけれど)
ブームともいえるオバマ人気には危惧を感じていて、政治の効果が出て経済が立ち直る兆しが見え始めるのなんて数年単位なのに、それを待てない市民の反動が怖いなぁと思っていたら、この本でもやはり、”100日でなにがしかの効果を出さないと”云々(いま手元に本がないので直接引用できません)と書かれていて、やっぱり状況は逼迫したままなのだなぁと思った次第。
だいたい、日本のニュースで街頭(日本)で「新大統領に何を期待しますか?」という質問に、ほとんどの人が「●●してほしい」「△△してほしい」ってまるで神社での願掛けのように自分の得になることを口にするのは(質問が質問だから仕方ないかもしれないし、あえてそういう回答のみ放送しているのかもしれないけれど)、げんなりしてしまいました。
本気で世界全体の仕組みを組み替えないといけなくて、いまオバマが失敗しても日本の政治はアメリカ離れなんてできない状況で共倒れになりそうで、オバマだって結局は1人の人間に過ぎないっていうのに(ため息)。「アレちょーだい」「コレちょうだい」と泣く子どものようで残念です。
わたしはオバマに、いまの前向きな気持ちを、将来どんなにバッシングが激しくなろうとも持ち続けて欲しいです。彼の(本心では何を考えているかわからないとはいえ)笑顔を見せられたら、まだ希望はあるかもしれない、と思えるだろうから。
タイトルこそ米新大統領の名前を関しているけれど、オバマの話が出てくるのは200ページの本の140ページ以降。そこまでは、アメリカの世界恐慌あたりからの政治史、つまり「オバマまで」のアメリカがどうだったのかを説明してくれているので、オバマを理解するのにとても役に立つ。
ブッシュの8年の後のオバマ、ではなくて、共和党の30年の後の民主党のオバマ、なのだね。(もちろんこの30年の間に民主党大統領もいたけれど)
ブームともいえるオバマ人気には危惧を感じていて、政治の効果が出て経済が立ち直る兆しが見え始めるのなんて数年単位なのに、それを待てない市民の反動が怖いなぁと思っていたら、この本でもやはり、”100日でなにがしかの効果を出さないと”云々(いま手元に本がないので直接引用できません)と書かれていて、やっぱり状況は逼迫したままなのだなぁと思った次第。
だいたい、日本のニュースで街頭(日本)で「新大統領に何を期待しますか?」という質問に、ほとんどの人が「●●してほしい」「△△してほしい」ってまるで神社での願掛けのように自分の得になることを口にするのは(質問が質問だから仕方ないかもしれないし、あえてそういう回答のみ放送しているのかもしれないけれど)、げんなりしてしまいました。
本気で世界全体の仕組みを組み替えないといけなくて、いまオバマが失敗しても日本の政治はアメリカ離れなんてできない状況で共倒れになりそうで、オバマだって結局は1人の人間に過ぎないっていうのに(ため息)。「アレちょーだい」「コレちょうだい」と泣く子どものようで残念です。
わたしはオバマに、いまの前向きな気持ちを、将来どんなにバッシングが激しくなろうとも持ち続けて欲しいです。彼の(本心では何を考えているかわからないとはいえ)笑顔を見せられたら、まだ希望はあるかもしれない、と思えるだろうから。
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悩む力
2008年11月26日 読書記録第4紀(07.10~)
怒涛のBL週間は終わりを告げ、通常営業に戻りました(笑)。
著者の顔を見て「騙されないぞ!」と言い聞かせて手に取ってこなかった、姜尚中を初めて手に取った。
夏目漱石とウェーバーを引き合いに、若者に向けて「悩み尽くせよ」と宣言する本。「大学生の必読書」に入ってそうな感じです。さくっと読めましたが、ウェーバーを読んだことがないのでなんだか置いてけぼりくらったような。
著者の顔を見て「騙されないぞ!」と言い聞かせて手に取ってこなかった、姜尚中を初めて手に取った。
夏目漱石とウェーバーを引き合いに、若者に向けて「悩み尽くせよ」と宣言する本。「大学生の必読書」に入ってそうな感じです。さくっと読めましたが、ウェーバーを読んだことがないのでなんだか置いてけぼりくらったような。
大学受験に強くなる教養講座 (ちくまプリマー新書 96)
2008年11月9日 読書記録第4紀(07.10~)【内容情報】(「BOOK」データベースより)
英語・現代文・小論文は三位一体である。本書は、受験評論に共通するテーマである「現代」を、六つの角度から考察することで、読解の知的バックグラウンド構築をめざす。
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 還元主義を超えて/第2章 言語とコミュニケーション/第3章 脱工業社会の到来/第4章 ポストコロニアルな世界史/第5章 アメリカ化する世界/第6章 現代民主主義の逆説
現代思想史のキーワードって、いろんなところで耳にするけれど、きちんと定義や位置づけを理解していないことが多くて、身についていなかったので、こういう高校生向けの解説ならとっつきやすいかなぁと思って手に取りました。
あ、あと帯に内田樹が推薦文を書いてたし。
すみませんミーハーで。
そっかーいまどきの大学生は、こういう論文を英語で出題されちゃうのか。
こういうのを理解してて、「それってニューアカっぽくね?」と鼻で笑えるようになりたいと思ったのだけれど、まだまだのようです(苦笑)。
でも、すごく分かりやすく書かれていました。
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図書館の死体
2008年11月2日 読書記録第4紀(07.10~)田舎町で図書館の館長を務めるジョーダン・ポティートは、身の不運を嘆いた。前の日に口論した中年女性が、あろうことか彼の図書館で他殺体で発見されたのだ。その被害者はジョーダンや彼の母親らの名前と、聖書からの引用を記した奇妙極まるメモを隠し持っていた。殺人の容疑者となったジョーダンは、身の証しを立てるために犯人捜しを始めるが―アガサ賞、マカヴィティ賞の最優秀新人賞を受賞した人気シリーズ第1弾。
図書館者としては外せないミステリなのに、なぜか今まで読んでおりませんでした……。たまたま先日古本屋で購入。
もっと図書館がキーになるミステリかと思ったら、どちらかといえば聖書のほうがキーになっていた。あとがきを読んだら、タイトルも原題は聖書の言葉を取っているそうだ。
まあ、日本だったら本好きにアピールするには「図書館」をタイトルに持ってくるのは正解だろうなぁ。
内容は、実はなかなか乗れなかったのだけれど、後半3分の1からはノンストップだった。
犯人候補が7人のリストになっていて、もちろん主人公もリストに載っているものの、主人公は犯人ではありえないので残り6人。個性的な人々なので、一通り紹介が終わったらリストに戻らなくても誰が誰だかはっきりわかった。主人公も、苦労してるけれどけっして聖人君子ではなくて、ずるいところもあれば聞き込みで失敗することもあり。ときどきとても個性的な比喩を持ち出してくるのがうまいなぁ。
狭いコミュニティに隠されたさまざまな人間関係が最後に明らかになって、そしてほろりとして終わる。よい読後感。
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今週のBL
2008年10月19日 読書記録第4紀(07.10~)いやあ、そろそろおしまいかと思ったら、思わぬ祭り状態に。
石田育絵「御縁」 ミリオンコミックス(大洋図書)
……い、石田育絵でハズすとは。表紙を見てハードな職業ものかと思ったら実はラブコメを狙っていたらしく、それなのに企業不正ネタが絡んだりして、どこにギアを入れて読めばいいのか混乱した、ってのが主原因かと思います……。正直ショックだ。
石原理「テッペンカケタカ」 ミリオンコミックス(大洋図書)
気を取り直して、ちょっと前に出ていたらしい石原理を購入。
うおっ。これはわたしの好きな石原理だ! あふP後期にやりかけてうやむやになった感のあるテーマ?を仕切りなおし、という感じかしら。主人公二人の、甘くならない関係はむしろ「カリスマ」に近いものがあるかもしれない。
すごくうれしい。続きが楽しみ!
松前侑里「パラダイスより不思議」 (ディプラス文庫)
5年くらい前まではとても好きな作家だったけれど、いつの間にかBLを読まなくなって忘れていた。今回新刊が出ていたので久々に読んで、なんかすごくよかった。
何がよかったんだろうなぁ……。相変わらず受けはトラウマを背負って重い感じなのだけれど、周りを固めるキャラが明るいから救われてるのかな。
攻が「動物の声が理解できる」というファンタジー設定なのですが、そういうものかと受け入れれば別に引っかかることもない。
松前侑里「リンゴが落ちても恋は始まらない」 (ディプラス文庫)
と、いうわけで松前侑里祭り開催(笑)。離れている間にずいぶん既刊作品が増えていて、しばらくは何を読もうか悩まずに済む。それよりも、古い作品はどこで手に入れたらいいのか悩む……。
これは、いろいろあって同居することになってしまった英語教師と物理教師の話。ホントにもう、リンゴが落ちようが何をしようがなかなか両想いにならないまま残り30ページを切ったときにはどうなることかと(笑)。あとがきにあるように、この作者にはめずらしく同じ歳のカップル。
松前侑里「プールいっぱいのブルー」 (ディプラス文庫)
一人暮らしを始めた高校生が、個性的な住人の集まるアパートで、隣りの部屋に住むイラストレーターに恋をする話。
裏表紙の解説を誤読して、手に取るのをずいぶん躊躇っていました……。隣りのイラストレーターは、同居人とは別にただの友達でした。うっかり「隣りのカップルから彼を奪う」系の話かと思ってしまった。実際読んでみたら、可愛い話でした。受がつまらないことで嫉妬してうじうじ悩むけど、まあ高校生っていったらこんなものかしら。
石田育絵「御縁」 ミリオンコミックス(大洋図書)
……い、石田育絵でハズすとは。表紙を見てハードな職業ものかと思ったら実はラブコメを狙っていたらしく、それなのに企業不正ネタが絡んだりして、どこにギアを入れて読めばいいのか混乱した、ってのが主原因かと思います……。正直ショックだ。
石原理「テッペンカケタカ」 ミリオンコミックス(大洋図書)
気を取り直して、ちょっと前に出ていたらしい石原理を購入。
うおっ。これはわたしの好きな石原理だ! あふP後期にやりかけてうやむやになった感のあるテーマ?を仕切りなおし、という感じかしら。主人公二人の、甘くならない関係はむしろ「カリスマ」に近いものがあるかもしれない。
すごくうれしい。続きが楽しみ!
松前侑里「パラダイスより不思議」 (ディプラス文庫)
5年くらい前まではとても好きな作家だったけれど、いつの間にかBLを読まなくなって忘れていた。今回新刊が出ていたので久々に読んで、なんかすごくよかった。
何がよかったんだろうなぁ……。相変わらず受けはトラウマを背負って重い感じなのだけれど、周りを固めるキャラが明るいから救われてるのかな。
攻が「動物の声が理解できる」というファンタジー設定なのですが、そういうものかと受け入れれば別に引っかかることもない。
松前侑里「リンゴが落ちても恋は始まらない」 (ディプラス文庫)
と、いうわけで松前侑里祭り開催(笑)。離れている間にずいぶん既刊作品が増えていて、しばらくは何を読もうか悩まずに済む。それよりも、古い作品はどこで手に入れたらいいのか悩む……。
これは、いろいろあって同居することになってしまった英語教師と物理教師の話。ホントにもう、リンゴが落ちようが何をしようがなかなか両想いにならないまま残り30ページを切ったときにはどうなることかと(笑)。あとがきにあるように、この作者にはめずらしく同じ歳のカップル。
松前侑里「プールいっぱいのブルー」 (ディプラス文庫)
一人暮らしを始めた高校生が、個性的な住人の集まるアパートで、隣りの部屋に住むイラストレーターに恋をする話。
裏表紙の解説を誤読して、手に取るのをずいぶん躊躇っていました……。隣りのイラストレーターは、同居人とは別にただの友達でした。うっかり「隣りのカップルから彼を奪う」系の話かと思ってしまった。実際読んでみたら、可愛い話でした。受がつまらないことで嫉妬してうじうじ悩むけど、まあ高校生っていったらこんなものかしら。
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今週のBL
2008年10月11日 読書記録第4紀(07.10~)
今週読んだBL3冊。
BL読みたい熱最盛期に密林で注文した本が先日届いた。
スローリズム 杉原理生(ルチル文庫,2008)
中学からの同級生・現サラリーマン。ゲイ×ノンケ。
攻があまりに禁欲的に、12年に渡って気長に親友の位置をキープし続けてようやく落とすという、作者の焦らしに読者も楽しく翻弄される。
二人の会話が、ナチュラルな若いお兄さん同士、という感じで好感が持てます。
青空(そら)の下で抱きしめたい 神江真凪(シャレード文庫,2006)
ホスト(+5歳の娘)×リストラされたサラリーマン。
先日来、気になっている作者のデビュー作。この作品でも、濃やかな(ややブンガク寄り?な)描写はそれなりに好み。だけれど、話はいまいち心に来なかったかな。
と、言うのも、わたしはホストのおにいちゃんよりも、当て馬の、ずっと受に想いを寄せていた大学時代の先輩の方が好みだからだ!(笑)。
自分の想いを押し殺して受に尽くすあたり、上記「スローリズム」の攻に通じるところがあるにもかかわらず、彼方はハッピーになり此方はあっさり捨てられる……(涙)。
ホント、私的な判断ですみません。
犬ほど素敵な商売はない 榎田尤利(シャイ・ノベルス、2006)
会社社長×ホスト。調教もの。
調教ものの傑作。
攻は、出張ホストを犬に見立てて、ホントに犬用のトレーニングをつけるので、話の前3分の2くらいまで、えちシーンはまったくない。にもかかわらずそこはかとなく漂うエロス……。
たとえばS×文学は、×Mというプレイにおいてしか表現されえない愛を描くとすれば、この話は、調教として表現される愛を昇華し表現した調教文学といえましょう。(<何この上から目線)
というか、前半はまったくの、犬がトレーニングを経て飼い主と信頼関係を築いていく過程を描いていて、こっからどうやってBLのお約束に移行するのか、ハラハラして読み進めましたが、実にスムーズにシフトチェンジして最後はらぶらぶバカップルで終わるという、お見事としか言いようがない。
攻と受双方の心の傷が、調教という世間様には受け入れられない関係性によってのみ補われるという解釈(といっていいのかな)は、まさしく初期のジュネ小説の体裁とも言えるけれど、それをうまくBL風味にしているところが職人技。
いい話を読みました。
ただ、この作品を読んでしまうと、先に読んでいた、この作品に出てくる出張ホスト業つながりの第2弾の小説は、この作品の特徴やいいところを継承していないことが非常に残念。
この作品を受けて第2弾を企画するなら、たとえば緊縛趣味とか、うーんいい例えが思いつかないけれどコスプレとか? そういうプレイの1種でありあまり世間様に受け入れられないものをテーマにするとよいのではないか、と素人考えながらに思うのです。
とはいえ、緊縛趣味は、文学的に解釈して映像化した映画があったよな……。
今日の日記はNGワードが多すぎて、検索で来る人がどっと増えたらイヤだなぁ(嘆息)。
BL読みたい熱最盛期に密林で注文した本が先日届いた。
スローリズム 杉原理生(ルチル文庫,2008)
中学からの同級生・現サラリーマン。ゲイ×ノンケ。
攻があまりに禁欲的に、12年に渡って気長に親友の位置をキープし続けてようやく落とすという、作者の焦らしに読者も楽しく翻弄される。
二人の会話が、ナチュラルな若いお兄さん同士、という感じで好感が持てます。
青空(そら)の下で抱きしめたい 神江真凪(シャレード文庫,2006)
ホスト(+5歳の娘)×リストラされたサラリーマン。
先日来、気になっている作者のデビュー作。この作品でも、濃やかな(ややブンガク寄り?な)描写はそれなりに好み。だけれど、話はいまいち心に来なかったかな。
と、言うのも、わたしはホストのおにいちゃんよりも、当て馬の、ずっと受に想いを寄せていた大学時代の先輩の方が好みだからだ!(笑)。
自分の想いを押し殺して受に尽くすあたり、上記「スローリズム」の攻に通じるところがあるにもかかわらず、彼方はハッピーになり此方はあっさり捨てられる……(涙)。
ホント、私的な判断ですみません。
犬ほど素敵な商売はない 榎田尤利(シャイ・ノベルス、2006)
会社社長×ホスト。調教もの。
調教ものの傑作。
攻は、出張ホストを犬に見立てて、ホントに犬用のトレーニングをつけるので、話の前3分の2くらいまで、えちシーンはまったくない。にもかかわらずそこはかとなく漂うエロス……。
たとえばS×文学は、×Mというプレイにおいてしか表現されえない愛を描くとすれば、この話は、調教として表現される愛を昇華し表現した調教文学といえましょう。(<何この上から目線)
というか、前半はまったくの、犬がトレーニングを経て飼い主と信頼関係を築いていく過程を描いていて、こっからどうやってBLのお約束に移行するのか、ハラハラして読み進めましたが、実にスムーズにシフトチェンジして最後はらぶらぶバカップルで終わるという、お見事としか言いようがない。
攻と受双方の心の傷が、調教という世間様には受け入れられない関係性によってのみ補われるという解釈(といっていいのかな)は、まさしく初期のジュネ小説の体裁とも言えるけれど、それをうまくBL風味にしているところが職人技。
いい話を読みました。
ただ、この作品を読んでしまうと、先に読んでいた、この作品に出てくる出張ホスト業つながりの第2弾の小説は、この作品の特徴やいいところを継承していないことが非常に残念。
この作品を受けて第2弾を企画するなら、たとえば緊縛趣味とか、うーんいい例えが思いつかないけれどコスプレとか? そういうプレイの1種でありあまり世間様に受け入れられないものをテーマにするとよいのではないか、と素人考えながらに思うのです。
とはいえ、緊縛趣味は、文学的に解釈して映像化した映画があったよな……。
今日の日記はNGワードが多すぎて、検索で来る人がどっと増えたらイヤだなぁ(嘆息)。
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シーセッド・ヒーセッド
2008年10月8日 読書記録第4紀(07.10~)
柴田よしきによる、保育園園長兼探偵の花ちゃんシリーズ。今回は3つの事件が順に語られる短編集。
あー、やっぱりおもしろい。もちろんヤクサの錬ちゃんの別の面が垣間見られるところがステキなんだけど(そっか、もう40代前半か……)、ハナちゃんの口を借りて語られる著者の、女性の気持ちがものすごくリアリティ感じてすごい。ステレオタイプな女性でなくて、生々しく生きている女性の言葉なんだよな。
と、いうわけでリコシリーズも待ってます。
あー、やっぱりおもしろい。もちろんヤクサの錬ちゃんの別の面が垣間見られるところがステキなんだけど(そっか、もう40代前半か……)、ハナちゃんの口を借りて語られる著者の、女性の気持ちがものすごくリアリティ感じてすごい。ステレオタイプな女性でなくて、生々しく生きている女性の言葉なんだよな。
と、いうわけでリコシリーズも待ってます。
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エンデュミオンと叡智の書
2008年10月4日 読書記録第4紀(07.10~)『最後の書』を手にした者は全世界を支配できる。もし悪人の手に渡ったら、世界は破滅への道をたどるのだ。ただし、その本のページは空白で、選ばれし者しか読むことができない。―1450年代ドイツの章は、グーテンベルクなど歴史上の人物が登場、印刷術秘話も織り込まれる。現代のオックスフォードが舞台の章は、主人公ブレークが追跡者の影に怯えながらも、本の謎を解明していく。果たしてその謎とは―。
図書館を舞台にした、本を巡るファンタジーということで期待しつつ、ハードカバーの文庫落ちとはいえハードカバーの時点で噂を聞いていない、というのはいかがなものか……とやや疑いつつ読んでみました。
うーん……。
本好きには魅力的なガジェットはたくさん出てくるのだけれど、キャラ(と敢えて言わせてもらいます)に魅力が感じられない。主人公は勉強ができなくて自分に自信のない少年なのだけれど、その彼だけが、魔力を持つ本に「選ばれる」理由が伝わらないし、彼を取り囲む女性キャラはみんな嫌なヤツだし。誰が「敵」なのかわからないのはストーリー上必要とはいえ、それ故に、主人公が何と戦っているのか(もしくは、何が最終目標なのか)がすごく見えにくい。
あとがきを読むと、この本は著者のデビュー作らしい。オクスフォードで博士を取ったのに仕事がなくて貧しい生活を送りながら書いた小説--ってまったくどこかのハリーとかポッターとかで見たようなバックボーンだけれど、そのハリーの第1作を読んだときにも感じた、著者の”こんなわたしを認めない世間”に対する恨みつらみみたいなものがジンワリにじみ出てくるようなところがどうにもこうにも。
それでもどこかのポッターのように面白ければまだいいが。
ハリウッドで映画化が決まっているそうだけれど、そこまでコンテンツ不足しているのか、彼の国の映画産業は。
でも、この話、原作に忠実にしようなんて思わないで、魅力的なガジェットを使って映画のよさを活かした脚本に組み立てなおすと、意外と化けるかもしれない。
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First Love
2008年9月28日 読書記録第4紀(07.10~)
先に読んだ「満天星」がとても好みだったので、同じ著者の1冊前に出たこの本を読んでみた。
モデルをやっていて誰とでも仲良くできる攻×日本史と本が好きで人間関係を築くのが苦手な受(高校教師)
高校時代に一瞬付き合っていたものの、別れた二人が6年後に再会する。現在の話を語りながら、ところどころ回想で過去の二人が断片的に描かれ、二人が別れた理由はずいぶん後になって明かされる。
前半の「First Love」は受視点で再会してから想いが通じ合うまで。後半の「Last Love」は、攻視点で想いが通じ合ってから以降。
いやー。タイヘン久しぶりに胸がズキズキするほど切ないBLを読みました。
やっぱりこの作家の作品、好きだわ。
攻の受に対する執着がもうタマリマセン。古い本だけれど、榊花月「抱きしめたい」シリーズを思い出させる組み合わせです。あちらの攻のほうがダメダメで受は流されて、読者はジェットコースター並みに振り回された挙句に、とうとう二人が別れてしまってから最終巻が出るまで数年放置、というサドっぷりですが、あれ(ノベルス全5巻)をぎゅっと凝縮してあんまり辛くない風に薄めた(とはいえエッセンスは残ってます)、という感じ。
あんまり気に入ったので、他の人はどう思っているんだろう、とブログ検索で感想を探したのですが……あれれ。そもそもあまり数がヒットしない上、7割の人はあまりピンと来ないらしい……。
これは、買い支え+売り込みしないと新しい作品が読めなくなる恐れがあるということ?
それは困る~。
と、いうわけで、どちらかといえば古いBL読みの方、騙されて(<騙してるのか?!)読んでくださいませ。
モデルをやっていて誰とでも仲良くできる攻×日本史と本が好きで人間関係を築くのが苦手な受(高校教師)
高校時代に一瞬付き合っていたものの、別れた二人が6年後に再会する。現在の話を語りながら、ところどころ回想で過去の二人が断片的に描かれ、二人が別れた理由はずいぶん後になって明かされる。
前半の「First Love」は受視点で再会してから想いが通じ合うまで。後半の「Last Love」は、攻視点で想いが通じ合ってから以降。
いやー。タイヘン久しぶりに胸がズキズキするほど切ないBLを読みました。
やっぱりこの作家の作品、好きだわ。
攻の受に対する執着がもうタマリマセン。古い本だけれど、榊花月「抱きしめたい」シリーズを思い出させる組み合わせです。あちらの攻のほうがダメダメで受は流されて、読者はジェットコースター並みに振り回された挙句に、とうとう二人が別れてしまってから最終巻が出るまで数年放置、というサドっぷりですが、あれ(ノベルス全5巻)をぎゅっと凝縮してあんまり辛くない風に薄めた(とはいえエッセンスは残ってます)、という感じ。
あんまり気に入ったので、他の人はどう思っているんだろう、とブログ検索で感想を探したのですが……あれれ。そもそもあまり数がヒットしない上、7割の人はあまりピンと来ないらしい……。
これは、買い支え+売り込みしないと新しい作品が読めなくなる恐れがあるということ?
それは困る~。
と、いうわけで、どちらかといえば古いBL読みの方、騙されて(<騙してるのか?!)読んでくださいませ。
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