※BL注意

木原音瀬作品は、読むのにふさわしくない精神状態、というのがある。
人の気持ちを抉るように書くので、それに耐えられなさそうなときには手に取るのも気が重い。
かてて加えて最近はBL波の来るのが間遠なので、ノベルスでこの本が出たとき、
いい噂ばかり聞いていたし、読もう読もうと何度も書店で手にとってもそのまま置くことが重なって
そのうち時機を逸してしまっていた。

が、今回講談社文庫に入るという。
ようやく買ってみる気になった。

痴漢の冤罪で実刑判決を受けた堂野。収監されたくせ者ばかりの雑居房で人間不信極まった堂野は、同部屋の喜多川の無垢な優しさに救われる。それは母親に請われるまま殺人犯として服役する喜多川の、生まれて初めての「愛情」だった。『箱の中』に加え、二人の出所後を描いた『檻の外』表題作を収録した決定版。


読み始めれば一気読み。
一般人だった主人公が、陥れられ騙され尊厳を剥ぎ取られて落ちきったところで向けられた好意に、傾きつつもあくまで常識が踏みとどまらせるあたりは生々しいリアリティを感じる。
結局、ごくまっとうな主人公に「普通じゃない」安らぎを掴ませるためには、あそこまで突き落とす必要があったのだろう。
とは思うものの、個人的なラノベ・BLの倫理ラインからはちょっとやりすぎた感がなきにしもあらず。
でも、感じ方は人それぞれなので、否定するわけじゃない。

攻めの造型は、読む前はもっと意識的に罪を犯した人間かと思っていたので、悲惨な子ども時代のせいで体は大人だけれど精神的には子ども、というところが、肩透かしでもあり安心して読めたところでもあり。初期の作品の「こどもの瞳」(攻めは精神後退した兄)を思い出した。
安心しては読めたけれど、木原音瀬には、もっときっつく攻めて欲しかった気もあり。
むー。

……あれ、なんか否定的な感想しか書いてない?
いや、おもしろかったんです!でも木原音瀬がおもしろいのはデフォルトだから!!

秋林さんも書かれているし解説でなんとかしをんさんも書いているけれど、
文庫にはシリーズ最後の番外編に当たる短編が収録されていないとのこと。
ノベルスも買わせて最初の出版社にもお金が入るようにという心遣いですね。
わかりました。浄財として払わせていただきます(涙)。

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