スピリチュアルにハマる人、ハマらない人
2006年12月8日 読書記録第3紀(06.07〜)
実は、いま毎週見ているテレビ番組が2本あって、一本が「のだめカンタービレ」、もう一本が「オーラの泉」だったりします。
最初は胡散臭いバラエティ番組かと思っていたし、どんな番組か知ってからも関心がなかったのですが、友達が「あれ、意外といいよ?」と言われて気になり始めました。でも実際に最初に見たのは、報道ステーションを見ていてそのままテレビを付けていたらいつの間にか始まったから。
最初は「ああ、これがウワサの」という程度の関心で見ていたけれど、気づいたら和んでる自分がいて、そのまま毎週見るようになりました。
ある日の番組はいじめ問題について江原氏と美輪氏が熱く語っていて、その言葉には自分の思いを代弁してもらえたようなものも多く、感動して翌日ブログ検索でこの番組の反応を調べてみました。案の定、どこでもどこでも絶賛で、チェックしていく端から新しい検索がヒットしていくような有様。
だから余計に、我に返ったのでした。
こんなに無批判に誰もが「感動した」「感動した」って、なんだか怖くない?
そんなときに書店で目に付いたのがこの新書。幻冬舎が鳴り物入りで創刊した新書第1弾の中の1冊で、タイトルにはっきりと出ていないけれど、オビには「江原さんのこと、(1)大好き! (2)インチキ! あなたはどっち?」とあって、スピリチュアルブームの代表格として江原氏をターゲットにしていることが示されています。
ここにはわたしの違和感の正体を明らかにしてくれることが書いてあるかしら?と思って手にとって見ました。
が。
実は最初の30ページで怒り心頭に達して部屋の隅に叩きつけたくなりました。なぜかというと、現代の子どもは生き返りを信じている、という現象の証左として、1998年刊行された森絵都「カラフル」を例示していたからでした。
違うだろーーーっっっ!!!
と、二重の意味で叫びたい。
確かに「カラフル」は生き返りをテーマにしていて多くの子どもに読まれただろうけれど、それはブームとなるような現象ではなかったという感触がある。(すみません、数字を出して示すことが出来ませんが……)あれは大人の児童文学読みが最初に見出した傑作だと思う。子どもや若い女の子たちは、「ダイブ!」で森絵都を見出して、遡って「カラフル」に行ったんじゃないかと思うのだが、いかがか?
そして、生き返りではなく生まれ変わりがテーマだけれど、まさしく(一部で)社会現象と化したマンガ、日渡早紀「ぼくの地球を守って」にまったく触れていないのは、論の進め方として完全に間違っている。
「ぼく地球(たま)」は1987年に第1巻が刊行されて、1994年に最終巻が発行されている(と、思う。きちんと調べている時間がなくて、多少時期が前後していることがあったらごめんなさい)。わたしは途中で読むのを止めてしまって、この作品がファンの少女たちに「前世ブーム」を巻き起こして社会現象とまでなり、作者が異例の「この話はフィクションです」宣言をするに至った事件は、後から知ったのですが、だから90年代前半の出来事ではなかったかと思う。87年に雑誌掲載された大島弓子の中篇作品を例示するくらいだったら、なぜこちらを出して来ないのか、忸怩とした思いがします。
それに生まれ変わりテーマのマンガで言ったら、少女漫画なら「海のオーロラ」、少年漫画も含めれば、手塚治虫「火の鳥」等を筆頭に、生まれ変わりネタなんて古今東西掃いて捨てるほど溢れていた。それが多少の浮き沈みはあるものの連綿と続いていて、たまたま90年前後に目立った動きがあり、95年のオウム事件で霊や生まれ変わりに対する忌避感が蔓延し(とこの本の著者は言っています)、2000年ごろにまた復活したように見えるだけではないかと思います。
正直、リサーチ不足だよなぁ、まあ人気評論家だからしかたないのかなぁと思いつつ、ふと気になってあとがきを読んだら、
「本書は、企画から完成まで、幻冬舎の小木田順子さんの強力なサポートがあったからこそできあがった。」とある。
ってことは、新書創刊ラインナップに人気評論家を加えるために、編集者がブームの頂点へのカウンター企画として持ち込んだ、ということか。だとしたら、リサーチ不足は著者ではなく編集者を責めるべきなのかしら。
ちなみに、キーワード「生まれ変わり 社会現象 女の子」あたりの掛け合わせでググると、1ページ目に「ぼく地球症候群」の話はヒットします。
まあ、そんなで非常に腹を立てながら読み進めたのですが、まあ、その前提にさえ目をつぶれば、スピリチュアルを「科学的でない」といいつつも、「でも、みんなが信じてるからはっきり批判も出来ないよね〜」というあいまいな態度でバランスを取りつつ、「気持ちよければウソでもだまされる」ブームに乗る人たちに「自分の頭で考えようよ」と囁いている。ケンカを避けつつブームに乗る人たちを批判する内容は、歯切れは悪いけれど面白く読みました。
特に、江原氏の見る人を和ませる容姿を、トトロや猫と同じ「ライナスの毛布」(中間領域)だという指摘は納得です。
(途中ですがいったんお休み)
ISBN:4344980034 新書 香山 リカ 幻冬舎 ¥756
最初は胡散臭いバラエティ番組かと思っていたし、どんな番組か知ってからも関心がなかったのですが、友達が「あれ、意外といいよ?」と言われて気になり始めました。でも実際に最初に見たのは、報道ステーションを見ていてそのままテレビを付けていたらいつの間にか始まったから。
最初は「ああ、これがウワサの」という程度の関心で見ていたけれど、気づいたら和んでる自分がいて、そのまま毎週見るようになりました。
ある日の番組はいじめ問題について江原氏と美輪氏が熱く語っていて、その言葉には自分の思いを代弁してもらえたようなものも多く、感動して翌日ブログ検索でこの番組の反応を調べてみました。案の定、どこでもどこでも絶賛で、チェックしていく端から新しい検索がヒットしていくような有様。
だから余計に、我に返ったのでした。
こんなに無批判に誰もが「感動した」「感動した」って、なんだか怖くない?
そんなときに書店で目に付いたのがこの新書。幻冬舎が鳴り物入りで創刊した新書第1弾の中の1冊で、タイトルにはっきりと出ていないけれど、オビには「江原さんのこと、(1)大好き! (2)インチキ! あなたはどっち?」とあって、スピリチュアルブームの代表格として江原氏をターゲットにしていることが示されています。
ここにはわたしの違和感の正体を明らかにしてくれることが書いてあるかしら?と思って手にとって見ました。
が。
実は最初の30ページで怒り心頭に達して部屋の隅に叩きつけたくなりました。なぜかというと、現代の子どもは生き返りを信じている、という現象の証左として、1998年刊行された森絵都「カラフル」を例示していたからでした。
違うだろーーーっっっ!!!
と、二重の意味で叫びたい。
確かに「カラフル」は生き返りをテーマにしていて多くの子どもに読まれただろうけれど、それはブームとなるような現象ではなかったという感触がある。(すみません、数字を出して示すことが出来ませんが……)あれは大人の児童文学読みが最初に見出した傑作だと思う。子どもや若い女の子たちは、「ダイブ!」で森絵都を見出して、遡って「カラフル」に行ったんじゃないかと思うのだが、いかがか?
そして、生き返りではなく生まれ変わりがテーマだけれど、まさしく(一部で)社会現象と化したマンガ、日渡早紀「ぼくの地球を守って」にまったく触れていないのは、論の進め方として完全に間違っている。
「ぼく地球(たま)」は1987年に第1巻が刊行されて、1994年に最終巻が発行されている(と、思う。きちんと調べている時間がなくて、多少時期が前後していることがあったらごめんなさい)。わたしは途中で読むのを止めてしまって、この作品がファンの少女たちに「前世ブーム」を巻き起こして社会現象とまでなり、作者が異例の「この話はフィクションです」宣言をするに至った事件は、後から知ったのですが、だから90年代前半の出来事ではなかったかと思う。87年に雑誌掲載された大島弓子の中篇作品を例示するくらいだったら、なぜこちらを出して来ないのか、忸怩とした思いがします。
それに生まれ変わりテーマのマンガで言ったら、少女漫画なら「海のオーロラ」、少年漫画も含めれば、手塚治虫「火の鳥」等を筆頭に、生まれ変わりネタなんて古今東西掃いて捨てるほど溢れていた。それが多少の浮き沈みはあるものの連綿と続いていて、たまたま90年前後に目立った動きがあり、95年のオウム事件で霊や生まれ変わりに対する忌避感が蔓延し(とこの本の著者は言っています)、2000年ごろにまた復活したように見えるだけではないかと思います。
正直、リサーチ不足だよなぁ、まあ人気評論家だからしかたないのかなぁと思いつつ、ふと気になってあとがきを読んだら、
「本書は、企画から完成まで、幻冬舎の小木田順子さんの強力なサポートがあったからこそできあがった。」とある。
ってことは、新書創刊ラインナップに人気評論家を加えるために、編集者がブームの頂点へのカウンター企画として持ち込んだ、ということか。だとしたら、リサーチ不足は著者ではなく編集者を責めるべきなのかしら。
ちなみに、キーワード「生まれ変わり 社会現象 女の子」あたりの掛け合わせでググると、1ページ目に「ぼく地球症候群」の話はヒットします。
まあ、そんなで非常に腹を立てながら読み進めたのですが、まあ、その前提にさえ目をつぶれば、スピリチュアルを「科学的でない」といいつつも、「でも、みんなが信じてるからはっきり批判も出来ないよね〜」というあいまいな態度でバランスを取りつつ、「気持ちよければウソでもだまされる」ブームに乗る人たちに「自分の頭で考えようよ」と囁いている。ケンカを避けつつブームに乗る人たちを批判する内容は、歯切れは悪いけれど面白く読みました。
特に、江原氏の見る人を和ませる容姿を、トトロや猫と同じ「ライナスの毛布」(中間領域)だという指摘は納得です。
(途中ですがいったんお休み)
ISBN:4344980034 新書 香山 リカ 幻冬舎 ¥756
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